研究課題
基盤研究(C)
1318名の日本人健常成人コホートを対象とし、2008年度研究参加時の喫煙状況やアトピー素因、肺機能等と新規喘息・COPD発症との関連を追跡調査している。2013年までの集計では、新規COPD発症群は正常者群に比べて研究参加時の1秒率が有意に低下していた。また研究参加時の経年的1秒量の減少は、正常者群が24ml/年に対して、新規喘息発症群は50ml/年、新規COPD発症群は45ml/年と有意に増加していた。すなわち肺機能が正常な健常人であっても、その後に喘息・COPDを発症する集団では、発症前から1秒量の急速な減少が存在することが示された。次にこの健常成人コホートのうちの967名に加えて、成人喘息患者213名を追加した全1180名の成人日本人に対して、全ゲノムに分布する約48万個の一塩基多型(SNP)について網羅的に遺伝子型を決定した。この網羅的遺伝子型を用いて、血清総IgE値に対するゲノムワイド関連解析を行った。その結果、MHC class I領域のHLA-C遺伝子近傍のrs3130941がゲノムワイド有意水準(p < 5.0 x 10-8)を満たして血清総IgE値に関連していた。すなわち、IgE産生にはMHC class IIを介した獲得免疫に加え、MHC class Iを介した自然免疫の関与が示された。さらに、上記の967名の健常成人集団と213名の喘息患者集団を用い、喘息発症に対するゲノムワイド関連解析を行った。その結果ヒアルロン酸合成酵素HAS-2遺伝子上流のrs7846389がゲノムワイド有意水準を満たして喘息発症と関連していた。低分子ヒアルロン酸は炎症促進に働く一方、高分子ヒアルロン酸は炎症に対して抑制的に働くことが知られており、今回同定されたSNPが機能的にも喘息発症に関係している可能性が考えられた。この結果については現在論文投稿中である。
1: 当初の計画以上に進展している
日本人健常成人前向きコホートを追跡調査し、第一の目的である新規の喘息およびCOPD発症に関連する因子の解析を行った。その結果、経年的な1秒量減少が両疾患の新規発症に関係していることが明らかになった。さらにゲノムワイド関連解析により、血清総IgE値および喘息発症に関連するSNPを同定することができた。これは当初計画していた以上の進展である。
日本人健常成人前向きコホートをさらに追跡調査し、新規の喘息およびCOPD発症に関係する因子の解析を継続する。また、今回同定された血清総IgEに関連するSNPと喘息発症に関連するSNPについて、新規の喘息発症とCOPD発症との関連性を解析する予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件)
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