研究課題
1318名の呼吸機能正常な日本人健常成人を対象とし、研究参加時の喫煙状況、アトピー素因、肺機能、遺伝子多型等と、新規喘息発症および新規COPD発症との関連を前向きに追跡調査している。5年間の追跡では、新規喘息発症者は39名、新規COPD発症者は16名であった。新規COPD発症群は正常者群に比べ、研究参加時の1秒率が有意に低下していた。また新規喘息発症群および新規COPD発症群は、正常者群に比べ研究参加時点の経年的な1秒量の減少が有意に大きかった。すなわち、研究参加時に肺機能が正常の健常人であっても、その後に喘息あるいはCOPDを発症する集団は、発症前から1秒量の急速な低下が認められることが明らかになった。次にこの健常成人コホート967名と成人喘息患者213名の集団を用い、喘息発症に対してゲノムワイド関連解析を行った。その結果、ヒアルロン酸合成酵素HAS-2遺伝子上流の一塩基多型rs7846389がゲノムワイド水準を満たして喘息発症と関連していた。この多型はHAS-2遺伝子の発現に関連していた。研究結果はClin Exp Allergyに論文報告した。また、40歳以上の中高年になって発症する喘息集団に対しても、ゲノムワイド関連解析を行った。その結果、粘液分泌に関係すると考えられるPBMUCL2遺伝子の上流の一塩基多型が中高年発症喘息に関連していた。この多型はPBMUCL2発現に有意に関連していた。さらにこの多型は、びまん性汎細気管支炎発症とCOPD発症にも有意に関連していた。中高年発症喘息とびまん性汎細気管支炎、COPDの発症には共通の病態が関係している可能性が考えられた。この結果については、J Allergy Clin Immunolに論文投稿中である。
1: 当初の計画以上に進展している
日本人健常成人前向きコホートを追跡調査し、本研究の第一の目的である新規の喘息発症と新規のCOPD発症に対して関与する因子の解析を行った。その結果、発症前の経年的1秒量の減少が両疾患の新規発症に有意に関連していることが明らかにされた。さらにゲノムワイド関連解析により、喘息発症とHAS-2遺伝子の関連、中高年での喘息発症とPBMUCL-2遺伝子との関連を明らかにすることができた。これは当初計画していた以上の進展である。
平成27年度まで本研究の前向きコホートを追跡調査し、新規の喘息およびCOPD発症に関係する因子の解析を継続する。さらに、ゲノムワイド関連解析で検出された喘息発症に関連する一塩基多型について、新規の喘息発症とCOPD発症についての関連性を解析する。
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