研究課題
呼吸機能正常な日本人健常成人1318名を対象とし、研究参加時の喫煙状況、肺機能、アトピー素因、遺伝子多型等の要因と、新規の喘息あるいはCOPD発症との関連を調査した。5年間の追跡では、新規喘息発症者は39名、COPD発症者は16名であった。新規COPD発症群は正常群に比べ研究参加時点の1秒率が有意に低下していた。また新規喘息発症群およびCOPD発症群は、正常群に比べ研究参加時点の経年的1秒量減少が有意に大きいことが明らかになった。次に肺機能検査値に対してゲノムワイド関連解析を行い、肺機能特性の遺伝率を推定した。その結果、努力性肺活量、1秒量、1秒率の遺伝率はそれぞれ71.2%、51.9%、41.6%であった。また、1秒率と関連が報告されている24遺伝子については、1秒率の遺伝率の4.3~12.0%を占めることが推定された。以上より、肺機能特性は数多くの遺伝子多型の相加的な影響により決定されることが示された。さらに、1秒率関連遺伝子から1秒率低下の遺伝的リスクスコアを計算したところ、喘息およびCOPDの発症と有意に関連していることが示された。遺伝的リスクスコアを計算することにより、喘息とCOPDを発症しやすい集団を選別できる可能性が考えられた。さらに上記健常成人集団と成人喘息患者集団を用い、喘息発症に対してゲノムワイド関連解析を行った。その結果、HAS-2遺伝子上流の一塩基多型がゲノムワイド水準を満たして喘息発症と関連していた。また粘液分泌に関係すると考えられるHCG22遺伝子上流の一塩基多型が、中高年発症喘息と関連していた。この多型はびまん性汎細気管支炎とCOPD発症にも関連していることが確認され、これら3疾患の発症には共通の病態が関与している可能性が考えられた。以上のように本研究では喘息とCOPDの発症に関係する因子について多くの新たな知見を得ることができた。
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