研究課題/領域番号 |
25461151
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高田 俊範 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (40361919)
|
研究分担者 |
坂上 拓郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (00444159)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 皮膚筋炎 / 間質性肺炎 |
研究概要 |
筋症状に乏しい皮膚筋炎(ADM)は、しばしば致死的な間質性肺炎を合併する。抗CADM-140抗体は、ADMに特異的にみられ、感染防御に関与するMDA5を認識する。そこで、“肺胞上皮細胞のMDA5と抗CADM-140抗体が反応し、サイトカインが過剰に産生され難治性間質性肺炎を発症する”と仮説を立てた。初年度は、抗CADM-140抗体高値の間質性肺炎合併ADMの血清中に増加しているサイトカインを検出することを試みた。 当科において、ADMに伴う間質性肺炎と診断され治療を行った症例のうち、治療前の血清が保存されていた13例を対象とした。13例は男性5例、女性8例、平均年齢は52.8歳、予後は13例中4例が死亡していた。生存例9例と死亡例4例の比較では、WBC, CRP, 肝機能、CK, Alb, KL-6, および治療前P/F比に有意な差はなかった。一方、抗CADM-140抗体価は、死亡群で有意に高値であった。 抗CADM-140抗体価高値群と低値群の血清を3例ずつプールし、プロテオーム解析を行った。高値群、低値群に認められた複数スポットのアミノ酸分析を行い、タンパク質を同定した。これらのうちFetuinとビタミンD結合タンパクについて13例を対象にELISA測定を行ったが、抗CADM-140抗体価との関連はみられなかった。次に、13例のうち代表的な3例(高抗体価致死例、高抗体価生存例、低抗体価生存例)を選び出し、Luminex(R) Systemにより39種のサイトカイン濃度を測定した。これにより、他の2例に比べ高抗体価致死例に高濃度にみられるサイトカインがいくつかみられた。これらのサイトカインの中には、病態との関連が疑われるもの、抗CADM-140抗体価と強い相関がみられるものもあった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、高抗CADM-140抗体価例の血液中に増加しているサイトカインを検出することを目的とした。研究当初は、血清中のすべてのタンパク質から当該サイトカインを検出することを目的としてプロテオーム解析を行った。しかしながら、血清を対象としたプロテオーム解析では、血清中に大量に存在するアルブミンやガンマグロブリンの影響を受け二次元電気泳動像が修飾されるため、目的とする炎症性サイトカインを検出できなかった。そこで、血清中の炎症性サイトカイン39種を標的として、抗CADM-140抗体と関連するサイトカインを探索した。この探索により、病態との関連が疑われるサイトカインをいくつかと、抗CADM-140抗体価と強い相関がみられるサイトカインを検出できた。したがって、研究初年度の目的はほぼ達成できた、と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究一年目は、ADMに伴う間質性肺炎と診断され治療を行った13例の、治療前の保存血清を解析対象とした。研究二年目は、①多数のCADM例、および②他の膠原病に伴う間質性肺疾患例を対象として、検出されたサイトカインの存在と発現の多少を検証する。現在、過去にADMに伴う間質性肺炎と診断され治療を行った症例が、20例ほど外来に通院中である。全例が、維持量のグルココルチコイドと症例によっては免疫抑制薬を内服している。これらの症例において、抗CADM-140抗体や関連するサイトカイン発現は明らかではない。そこで、抗CADM-140抗体や関連するサイトカイン発現の治療前後の変化、安定例での発現の多少を確認する。 また、ADMに伴う間質性肺疾患以外にも、従来治療に抵抗性の間質性肺疾患が存在する。たとえば、IPFの急性増悪は様々な治療に抵抗し、致死率は80%に達する。ARDSは、有効な薬物治療がなく致死率が30-40%にのぼる。またRA、シェーグレン症候群に伴う間質性肺炎にも、ステロイド抵抗性で致死的となる例がある。これらの疾患は、臨床像(急速な進行、すりガラス影、治療抵抗性)から、ADMに伴う間質性肺疾患と共通の病態(=同じサイトカインが関与)である可能性がある。この仮説を検証するため、基礎疾患を問わず急速進行性間質性肺炎、ARDS,IPFの急性増悪症例を対象に、保存されている血清でサイトカイン発現を確認する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究初年度は、高抗CADM-140抗体価例の血液中に増加しているサイトカインを検出することを目的とした。プロテオーム解析では、血清中に大量に存在するアルブミンやガンマグロブリンの影響により目的とする炎症性サイトカインを検出できなかった。しかし、血清中の炎症性サイトカイン39種を標的として抗CADM-140抗体と関連するサイトカインを探索したところ、病態との関連が疑われるサイトカインをいくつかと、抗CADM-140抗体価と強い相関がみられるサイトカインを検出できた。ここまでで研究初年度の目的はほぼ達成できたため、次年度使用額が生じることとなった。 次年度は、初年度に検出されたサイトカイン異常が、治療後や安定期の症例、および同様の病態が疑われる他の間質性肺疾患でも観察されるかどうかを確認する。このような多数症例を対象としたサイトカイン測定のため、初年度から繰り越した金額を使用する。
|