研究課題
肺は,円滑な呼吸のため表面張力を減じるサーファクタント物質を産生する.自己免疫性肺胞蛋白症は,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する自己抗体の出現により肺胞マクロファージのサーファクタント除去能が低下するため肺胞構造内に無構造物質が蓄積する疾患である.本研究では,本症の新規治療であるGM-CSF吸入治療の治療効果の機序を画像~細胞レベルで探った.本邦での多施設Ⅱ相試験でGM-CSF吸入治療を完遂した本症患者の治療後3年間の経過観察の検討では,治療前の肺機能検査での肺活量が追加治療までの時間と相関し,予後との関連が示された.そこで肺活量の低下として肺線維化との関連を考え,当該患者での胸部CT画像の線維化を複数の放射線科専門医で評価したが,線維化の所見は少なく関連は示されなかった.一方,HRCTのdeinsitometryでの検討では,すりガラス影に相当するCT値-900HU~-750HUの領域の広さと肺活量や血清マーカーとの相関が示唆された.従って肺活量低下は肺内沈着物質量を反映し,その多寡が本症の重症度やGM-CSF吸入治療の治療効果と関連する可能性が考えられた.吸入治療で用いられるGM-CSFの糖鎖構造の検討として,糖鎖のない大腸菌由来製剤と,糖鎖の豊富なCHO細胞由来製剤とを,GM-CSF依存細胞株の実験系で比較した.CHO細胞由来製剤は,長時間作用型で増殖活性が高く,糖鎖が受容体との親和性に影響し,長大な糖鎖が細胞の取り込みを遅らせ,効果時間が延びる可能性が考えられた.またGM-CSF吸入動物系での抗体産生を検討し,糖鎖のない大腸菌由来製剤の方が抗体価が高く,糖鎖の長いCHO細胞製剤で,抗体価は低くなる傾向が示された.また患者側の要因の検討として,GM-CSF受容体変異による肺胞蛋白症患者の全肺洗浄前後の比較より,IL-2やIL-5等が病状の推移に並行に動く一方,IL-3やM-CSFは高値を維持し,GM-CSFの信号低下を補正する機序への関与が考えられた.
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