研究実績の概要 |
我々は、喫煙喘息例では好中球性炎症に加え好酸球性・2型炎症が遷延し、アトピー素因が強調されることを示してきた。本研究では喫煙喘息例の一つの特徴である好酸球性・2型炎症/混合性炎症を惹起しうる因子に着目し、それらの因子の探索からエピゲノム解析への展開を計画した。初めに喫煙と好酸球性・2型炎症に共通する因子として、ブドウ球菌由来スーパー抗原(SE)に対する感作と禁煙後の炎症遷延との関係を臨床検体で明らかにした。一方、SE刺激下気道平滑筋細胞でのサイトカイン発現に有意な変化はなく、この系でのエピゲノム解析候補サイトカイン同定は困難であった。しかし研究期間中に、1)エピゲノム変化部位はゲノム変化部位と密に関連する可能性が示されてきたこと、2)疾患内病型への寄与遺伝子探索には、フェノタイプ_エンドタイプ別解析において、より臨床的寄与度の高い結果が得られる可能性が示されてきたため、最終年度は好酸球性・2型炎症の病態に深く関与するゲノム変化部位の同定を最優先とした。結果、2型炎症喘息例において、喘息増悪にIL4Rα[Odds比 4.01 (1.47, 11.1)]とADAM33[Odds比2.81 (1.05, 7.67)]多型が各々独立して高いodds比で寄与することが示された。特に後者は喫煙喘息に特徴的な混合性炎症と関連することが示され、寄与度の高いゲノム変化部位を同定し、効率的なエピゲノム解析の基盤形成に寄与したと言える。
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