研究課題
抗myxovirus resistance protein-1 (Mx1)抗体測定ELISA改良に取り組んだ。His-tag sequence付加したMx1全長蛋白発現ベクター(バキュロウイルス)を再作成し、Hi-5細胞にトランスフェクトし、リコンビナント蛋白を精製した。抗Mx1抗体はIgG型、IgA型、IgM型をそれぞれ測定した。カットオフ値は、健常人の平均+6SDに設定した。昨年度より開始した当院間質性肺炎患者コホート(現在172例)中、抗Mx1抗体測定を完了した特発性間質性肺炎(IIPs)は116例、内20例(17% )が抗Mx1抗体(IgG型、IgA型、IgM型いずれか)陽性であった。外科的肺生検による組織学的UIP及びATS/ERS/JRS/ALAT 2011分類に基づく画像的UIPパターン(胸部放射線科医3名による診断)を有する患者をIPFとし(20例)、その他をnon-IPFとし(96例)、2群を比較すると、抗Mx1抗体高値はnon-IPF群にのみ検出された。抗Mx1抗体陽性IIPs(20例)と抗Mx1抗体陰性IIPs(96例)間で比較すると、抗Mx1抗体陽性IIPsは女性が多く(p = 0.0144)、HRCT所見で下肺野優位分布(p = 0,002)、末梢優位分布(p = 0.002)が抗Mx1陰性IIPsに多く見られた。IIPs患者に一定の割合で存在する抗ARS抗体陽性IIPsと抗Mx1陽性IIPsはほぼ完全に排他的であった。他のINSIP特異的自己抗体として、抗NINJ2抗体を検討した。抗NINJ2抗体測定ELISAを作成したが、抗NINJ2抗体は一部健常人にも存在し、間質性肺炎特異的自己抗体としての検討は一旦中断した。サルコイドーシス特異的マーカーを探索するために、サルコイドーシス患者コホート作成(目標100例前後)を開始し症例を集積中である。
2: おおむね順調に進展している
抗Mx1抗体測定ELISAが完成した。間質性肺炎コホートにおける抗Mx1抗体測定により、抗Mx1抗体陽性IIPsは、IIPsの17%を占め、抗ARS抗体陽性IIPsとは独立し、やや女性が多く、画像的な特徴はNSIP-patternを示す一群であることが解明できた(現在論文準備中)。サルコイドーシスコホート作成を開始できた。
抗Mx1抗体陽性IIPsと陰性IIPsの予後やPFSに関するレトロスペクティブな調査を、共同研究施設である近畿中央胸部疾患センターで行う。間質性肺炎におけるMx1及び抗Mx1抗体の役割解明を進める。間質性肺炎コホート、サルコイドーシスコホートを増やし、疾患マーカーとなる他の抗体を検討する。
研究の進展に伴い、当初予見し得なかった新たな知見が得られ、より高度な研究成果を得るために、新たな知見の分析を行う研究計画の変更が必要となった。
物品購入、動物実験、及び成果発表のための学会出張旅費で使用予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件)
Lung
巻: 192 ページ: 729-737
10.1007/s00408-014-9623-4
BMC pulmonary medicine
巻: 14 ページ: 172
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