研究課題
アムルビシンはアントラサイクリン系の抗がん剤であり、肺がんに対して高い抗腫瘍効果を示す。特に小細胞肺がんにおいて、セカンドライン以降の化学療法のキードラッグとなっているが、小細胞肺がんは未だ予後不良の疾患であり、長期生存を妨げている一因としてアムルビシンが誘導する抗がん剤に対する薬剤耐性の可能性が考えられる。しかしながら、アムルビシンの耐性化機序については未だ不明な点が多い。今回の研究は、アムルビシンの耐性化機構を解明し、その治療法を確立することである。まず、アムルビシンの代謝産物であるアムルビシノールを長期間曝露することで、アムルビシノール耐性肺がん細胞株(H520、DMS53)を樹立した。その結果、アムルビシノール耐性化前の細胞に比べて、アムルビシノール耐性株ではEGFRのリガンドであるアンフィレグリンの遺伝子の発現が亢進していることが明らかとなった。アンフィレグリンはアムルビシノールの刺激により培地中に産生され、アムルビシンに対する感受性を低下させた。一方、アムルビシノール耐性株におけるアンフィレグリンの発現をsiRNAによりノックダウンすると、アムルビシノールに対する感受性が回復した。セツキシマブにもsiRNAと同様にアムルビシノール耐性株のアムルビシノールに対する感受性を改善する効果があり、アムルビシノール耐性株の皮下移植マウスモデルでも、セツキシマブは高い抗腫瘍効果を示した。以上より、アムルビシンの耐性化にアンフィレグリンが関与しており、セツキシマブがアムルビシンに対する耐性化の有望な治療薬になりうる可能性が示唆された。
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