研究課題
現在のタンパク医薬、なかでも、ペプチドが抗体よりも安価で優れた医薬品として、現在注目されている。ペプチドはタンパク質より構造が不安定で、体内では短時間で分解されるため、医薬品に不向きであると思われていたが、構造改変技術の進歩により構造が安定し、抗体と遜色ない生理活性を持つようになり安全性と特異性の高いペプチドを基本とした創薬が重要視されている。今回、我々は肺線維症において重要な増殖因子であるPDGFをターゲットにした線維化ペプチドの有効性の検討を行った。標的タンパク質の活性を阻害するペプチドの設計方法は、蛋白質分子内のAntisense Homology Box(AHB)と命名した部分のアミノ酸配列が相互にアンチセンスアミノ酸となっている部位間で相互反応をおこし、高次構造の形成と維持に重要な働きをしていることを提唱(Nature Med. 1: 894, 1995)このAHB の概念から、相補性ペプチドでPDGF分子中のPDGFRとAHBの関係にある相補性ペプチドを設計した。末端のアセチル化/アミド化処理施行(純度>90%)[RASFYELYTSVEYIASVS]ペプチドの効果が抗線維化効果の確認、検討を行った。線維芽細胞への接着ではFAMで標識ペプチドを用いマウス線維芽細胞と反応させ免疫蛍光染色を行った。コントロールペプチドと比べ、細胞表面への相補性ペプチドの接着が確認された。またin vitroでは、相補性ペプチド(3uM)でPDGF刺激による線維芽細胞増殖抑制効果を認めた。またin vivo ではBLM肺線維症マウスモデルにて相補性ペプチドの抗線維化効果が有意(P<0.05)に確認された。今後は論文化と抗線維化ペプチドとして[RASFYELYTSVEYIASVS]ペプチドの特許申請を予定している。
2: おおむね順調に進展している
順調に研究を実施しているが論文等の研究の成果発表には至っていない
今回の、in vitroのassayでも、相補性ペプチドの1回投与では顕著な細胞増殖抑制効果はなかった。半減期が短いことを想定し3回投与を24時間毎行い検討すると、有意な増殖抑制効果を認めた。肺線維症モデルは気管内投与で治療効果を認めたものの顕著な線維化の抑制効果までには至らなかった。これはペプチドが、血中半減期が極めて短いことが影響していると考えられる。ペプチド末端のアセチル化/アミド化ありペプチドを環状化するなどの処理を検討する必要性と安定したデリバリーシステムの研究が課題である
平成27年3月納品となり支払いが完了していないため、次年度使用額が生じた。
平成27年4月に支払いが完了予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
Am J Respir Cell Mol Biol
巻: 51(6) ページ: 793-801
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巻: 18(1) ページ: 154-157