<研究目的とその意義>特発性肺線維症は、未だ確立した治療法はなく5年生存率は50%以下と極めて予後不良の疾患であり、病態解明と新規抗線維化薬の開発が重要な課題となっている。近年、「ポスト抗体医薬」の一つとして疾患および標的バイオマーカーを特異的に認識し阻害するペプチド創薬の分野が注目され研究開発がなされている。今回我々は、ANTIS/MIMETICシステムにより設計された候補ペプチドから、肺線維化の重要なジグナル分子であるPDGFシグナルの作用を制御できる相補性ペプチドA(18アミノ酸残基RASFYELYTSVEYIASVS)を見出した。相補性ペプチドAの機能解析と治療効果を検討した。まず、マウス線維芽細胞を用いて[3H]thymidineincorporation assayにて相補性ペプチドAのPDGF-BB刺激による肺線維芽細胞増殖を抑制する効果検討した。その結果、3~5uMの濃度で肺線維芽細胞増殖を抑制する効果を認めた。他の増殖因子であるFGF、PDGF-AA、IGFに対しても同様の効果を認めた。次に、肺線維芽細胞への相補性ペプチドAのBindingを検討した。方法は、FAMで標識した相補性ペプチドAをマウス線維芽細胞にPDGF-B存在下で反応させFACS、免疫染色を実施し検討した。その結果、ランダムペプチドと比較し相補性ペプチドAとマウス線維芽細胞のBindingを証明した。次にブレオマイシン肺線維症マウスモデルを用い相補ペプチドAのIn Vitroの効果を検討した。その結果、Ashcroft scoreは相補性ペプチドAの気管投与群で有意な抗線維化効果を確認した。相補ペプチドAは、PDGFによる肺線維芽細胞増殖を介しておこる線維化病態の治療薬として有用である結果が予想され、特発性肺線維症に対する「ペプチド分子標的薬」として疾患応用できる可能性があることより意義があると思われる。
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