研究課題/領域番号 |
25461164
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
大野 勲 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (00250762)
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研究分担者 |
山内 広平 岩手医科大学, 医学部, 教授 (20200579)
曽良 一郎 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40322713)
伊左治 知弥 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (80433514)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 喘息 / ストレス / オピオイド受容体 / 免疫学 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
H27年度は75名の喘息患者を追加し、計486名(男性204名/女性282名、年齢65.1±16.6[25~102]歳)の臨床データを収集した。このうち127名からストレス問診票によるストレススコアのデータを収集した。喘息患者37名において、末梢血単核球をPMA/ionomycinで、μ-オピオイド受容体(MOR)リガンド(DAMGO)の存在化で、刺激し培養液中のIL-4を測定した。MOR遺伝子のgenotypeは、300名で実施し、rs1799971AG A/A 35%、A/G 40%、G/G 22.3%、未定 2.7%;rs2075572CG C/C 52%、C/G 28%、G/G 5.7%、未定 14.3%;rs599548AG A/A 1.0%、A/G 24.3%、G/G 68.3%、未定 6.4%;rs558025AG A/A 79.7%、A/G 12.7%、G/G 2.3%、未定 5.3%であった。rs1799971において、genotypeの間に、出現頻度、性別、喫煙の有無、肥満の程度、治療について、統計学的に有意差がなかったので、このSNPについて検討した。その結果、 1)ストレススコアとMOR遺伝子genotype:rs1799971において、Gアレル(A/G、G/G)を有する喘息患者は、A/Aを有する喘息患者より、有意にストレススコアが大きい=ストレスを感じやすいことが判明した。 2)IL-4産生:IL-4産生量に対するMORリガンドの有意な効果は、全体、性別、genotype別でも、みられなかった。 3)rs1799971においてGアレルを有する喘息患者は、肥満や喫煙の環境下で、有意に重症化(末梢血好酸球の増加、気道過敏性の亢進、一秒量・一秒率の低下)しやすく、ストレスの増加に相関した気道狭窄の増強が有意に認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者の臨床情報およびストレス問診票の収集とμ-オピオイド受容体(MOR)遺伝型解析が進み、MOR遺伝型と臨床データの相関についての統計解析も順調に進めることができた。その結果、rs1799971においてGアレル(A/G、G/G)を有する喘息患者は、ストレスを感じやすく、ストレスの増加に相関して気道狭窄が増強することや、ある環境下(肥満や喫煙)では重症化(末梢血好酸球の増加、気道過敏性の亢進、一秒量・一秒率の低下)しやすいことがわかってきた。 一方、患者末梢血リンパ球からのTh2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)の産生に対するオピオイド受容体遺伝型に関連したMORリガンドの産生増強効果を予想したが、関連が認められないだけでなく、これまで報告されていたMOR刺激によるサイトカイン産生増強も見られなかった。従って、マウスCD4+T細胞のMOR SNP導入実験は中止した。 この点は予想外であったが、ストレスによる喘息悪化がMOR遺伝型に関連することは判明したので、Th2サイトカイン産生を直接増強する以外のルートを検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の成果として、rs1799971においてGアレル(A/G、G/G)の遺伝型が、ストレスによるアレルギー性炎症の悪化や気道反応の増悪に関わることが判明した。しかし、その機序として、T細胞によるTh2サイトカインの産生増強という直接効果ではないことも明らかとなった。すなわち、T細胞のMOR SNPsではなく、神経系のMOR SNPsの関与が考えられる。rs1799971のGアレルでは、リガンドの結合親和性が上昇すること、ストレスに対する生体反応の一つとして遊離されるストレスホルモンであるグルココルチコイドの分泌が増加することが報告されている。以前我々は、ストレス喘息モデルマウスを用いて、ストレスから喘息気道反応の悪化に至る経路の一つとして、グルココルチコイドの過剰分泌を明らかにした。そこで、平成28年度では、rs1799971 SNP導入マウスを入手し、我々が確立したストレス喘息モデルの手法で、rs1799971遺伝型とストレスによる喘息増悪およびグルココルチコイド分泌との関連を明らかにする。
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