Interleukin (IL)-29 は、抗ウイルス作用を有する新規のサイトカインとして 2003 年に発見された。IL-29 の受容体は、IL-10 receptor β (IL-10Rβ) および IL-28Rα のヘテロ二量体で構成されている。IL-10Rβ は様々な細胞に発現しているが、IL-28Rα は一部の細胞にしか発現していない。IL-29 が作用するかどうかは IL-28Rα が発現しているかどうかによって決定する。本研究では、IL-28R 発現遺伝子組換えアデノウイルスを作成して、IL-28Rα を発現していない悪性胸膜中皮腫細胞に感染させて IL-28Rα を発現させ、IL-29 に対する感受性を獲得するかどうかを検討した。IL-28R 発現遺伝子組換えアデノウイルスを感染させた悪性胸膜中皮腫の6種類の細胞株 MSTO-211H、NCI-H2052 、NCI-H226 、NCI-H2373、NCI-H2452 および NCI-H28 では IL-28R mRNA および 細胞表面での IL-28R 発現が認められた一方、親株および Neo 発現遺伝子組換えアデノウイルスを感染させた悪性胸膜中皮腫細胞株では IL-28R mRNA および 細胞表面での IL-28R 発現が認められなかった。IL-28R 発現遺伝子組換えアデノウイルスを感染させた悪性胸膜中皮腫細胞に IL-29 を作用させて細胞増殖抑制作用を検討すると、細胞株の種類により程度に差が認められたが、軽度な細胞増殖抑制作用が確認できた。SCID マウスに移植した悪性胸膜中皮腫細胞に IL-28R 発現遺伝子組換えアデノウイルスと IL-29 を投与した場合は、コントロールの遺伝子組換えアデノウイルスと IL-29 を投与した場合と比較して、増殖抑制傾向は認められたが有為差は確認できなかった。
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