研究課題/領域番号 |
25461166
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小林 弘祐 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (70153632)
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研究分担者 |
久保田 勝 北里大学, 医学部, 准教授 (00234500)
藤井 重元 熊本大学, その他の研究科, 助教 (00325333)
赤池 孝章 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20231798)
小久保 謙一 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (20287965)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ARDS / 一酸化窒素ガス / 水素ガス |
研究概要 |
誤嚥性肺炎(比較的軽いARDSモデル)での水素吸入の効果 【方法】雄性マウスC57BL/6J (6~9週齢、25 g以下)を使用し、麻酔下のマウスの左肺に0.1Nの塩酸を注入し、生食注入群を対照に、塩酸注入群と塩酸注入後2%水素吸入群との3群でIL-6、HE染色像の肺損傷スコアの比較を行った。 【結果】対照群に比べ、HCl群ではIL-6濃度が有意に増加したが、水素吸入による有意な低下はみられなかった。一方、肺損傷スコアの解析では、直接障害肺(左肺)および間接障害肺(右肺)ともに水素吸入による肺損傷の有意な軽減が見られた。 致死性ARDSモデルにおける水素・一酸化窒素ガス吸入の効果 【方法】雄性マウスC57BL/6J (6~9週齢、25 g以下)を使用し、α-GalCerを体重1 gあたり0.1 μg尾静脈投与し、6時間後LPSを体重1 gあたり0.5 μg尾静脈投与する事によりARDSモデルを作成した。LPS投与後から3時間おきに24時間観察を行い、Kaplan-Meier法により生存時間解析を行った。Control群(ガス吸入なし)、水素吸入群(N2:77%, O2:21%, H2:2%)、一酸化窒素吸入群(N2:79%, O2:21%, NO:50 ppm)、併用吸入群(N2:77%, O2:21%, H2:2%, NO:50 ppm)の4群で飼育BOX内にてガス吸入管理を24時間行い、比較・検討を行った。 【結果】Control群はLPS投与後10匹中6匹が24時間以内に死亡し、残った4匹中3匹も36時間以内に死亡、残りの1匹は72時間後死亡した。水素吸入群では4匹中3匹生存した。一方、一酸化窒素吸入群、併用吸入群では24時間5匹すべて生存し、control 群と比較し有意に生存率が延長した。IL-6の血中濃度はcontrol群に比べ水素吸入群および併用吸入群で有意に低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誤嚥性肺炎モデルの水素の効果の解析は進展したが、一酸化窒素ガスとの併用投与実験が、遅れている。 致死性ARDSモデルの先行研究がラットでの報告があったが、マウスでの投与量とタイミングがラットとは異なり、条件設定にやや手間取ったが、水素・一酸化窒素ガスの併用投与も始まり、生存曲線が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には水素ガスとNOガスの併用吸入が単独吸入よりも肺損傷を軽減するかどうかを、さらに、定量的に明らかにする。具体的には各臓器の血管外乾湿重量比、気管支肺胞洗浄液での細胞数・細胞成分・アルブミン濃度、血漿中の炎症性サイトカインやマロンジアルデヒド、肺組織の各種酸化マーカーの免疫組織染色を肺損傷の指標とする。 併用吸入の効果が認められた場合には、活性窒素種による組織障害の軽減効果を組織と血液のニトロチロシンを指標として定量的に明らかにする。併用効果が期待した通りでなかった場合には水素ガスとNOガスの至適濃度や吸入のタイミングを詳しく調べる。 平成27年度には、平成26年度の検討を精緻化し、さらに致死的ARDSモデルにおいて、水素ガスとNOガスの併用吸入が多臓器障害をも軽減することができるかどうか明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
一酸化窒素ガスと水素ガスの併用吸入システムは1系統しかなく、また、実験を行う人的資源の問題もあり、致死性ARDSモデルでの併用吸入実験を優先した。誤嚥性肺炎モデルでの水素単独吸入での検討は進んでいるが、その他のガスの吸入実験の進捗が遅れた。そのため助成金にいくらかの余剰が生じた。 致死性ARDSモデルでの検討が軌道に乗っているので、臨床応用での予後改善を考えて、この検討を優先して推進し、並行して、臨床現場で遭遇することが多い誤嚥性肺炎モデルでの検討を行う。余剰金額はそれほど多額ではなく、動物購入および飼育費と水素、一酸化窒素、酸素、窒素のガスボンベに使用予定である。
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