研究課題
基盤研究(C)
Th2型免疫反応は気管支喘息などのアレルギー性炎症において中心的な役割を担っている。しかし、Th2型炎症を採血等で簡便に評価し得るバイオマーカーはこれまでになく、また、Th2サイトカインを標的とした治療薬の開発が進められているものの、IL-5やIL-13を標的とした治療薬の効果は、気管支喘息症例の一部でしか認められていない。我々は、マウスの研究から、補助シグナル分子CD27陰性CD4陽性T細胞がアレルギー性炎症の新規バイオマーカーと成り得る可能性を見出し、さらには、CD27のリガンドであるCD70に対する抗体がTh2細胞への分化を直接標的とする治療に成り得る可能性を見出している。本研究では、気管支喘息症例のバイオマーカーとしてのCD27陰性CD4陽性T細胞の可能性を明らかにすることを目的としている。本年度は、118症例で採血を実施し、CD27陰性CD4陽性T細胞をフローサイトメトリーで解析した。末梢血液中CD27陰性CD4陽性T細胞は、重症度、治療ステップ、Asthma Control Testスコア、呼吸機能検査、呼気中一酸化窒素濃度との相関を認めなかった。一方で、CD27陽性CD4陽性T細胞は、%FEV1.0、%PEFと弱い相関を認めた。また、77症例においては、血清中のペリオスチン、テネイシンCをELISAにて測定した。血清ペリオスチンとテネイシンC は、CD27陰性CD4陽性T細胞、重症度、治療ステップ、Asthma Control Testスコア、呼吸機能検査、呼気中一酸化窒素濃度との相関を認めなかったものの、血清ペリオスチンは末梢血好酸球数、血清総IgEと正の相関を認め、血清テネイシンCは末梢血好中球数との正の相関を認めた。さらに、ペリオスチンとテネイシンCが共に高値の群においては、CD27陰性CD4陽性T細胞数とペリオスチンとの間に正の相関を認めた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、118症例で採血を実施し、CD27陰性/陽性CD4陽性T細胞をフローサイトメトリーで解析した。また、40症例においては、血清中の25(OH)ビタミンD、1.25(OH)2ビタミンD、オステオポンチンを、77症例においては、ペリオスチン、テネイシンC をELISAにて測定した。結果、上述の如くの結果を得ている。症例集積は順調に進展しているが、ELISA未実施の症例があり、順調とは言い難い。以上より、おおむね順調に進展しているとした。
現状では、CD27陰性CD4陽性T細胞は、重症度、治療ステップ、Asthma Control Testスコア、呼吸機能検査等との相関を認めないことから、病勢を反映するバイオマーカーとしての期待が低くなった。現在、COPD症例と健常者の集積が少ないため、次年度は従来の予定通り、COPD症例と健常者の集積を推進し喘息の新たなバイオマーカーを確立する。しかし、一方で、マウスの研究成果に反してCD27陽性CD4陽性T細胞と%FEV1.0、%PEFの間に相関を認めており、病勢を反映するバイオマーカーとして、さらなる解析を推進する。また、血清ペリオスチンと末梢血好酸球数、血清テネイシンCと末梢血好中球数とに相関を認め、ペリオスチンとテネイシンCが共に高値の群におけるCD27陰性CD4陽性T細胞数とペリオスチンの相関を認める結果は、これまでにない知見である。このため、更なる症例の集積を推進し、喘息の新規バイオマーカー、サロゲートマーカーの開発に留まらず、新たなフェノタイプ・エンドタイプを構築を推進する。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 444 ページ: 235-240
10.1016/j.bbrc.2014.01.060.