研究課題
Th2型免疫反応は気管支喘息などのアレルギー性炎症において中心的な役割を担っている。しかし、Th2型炎症を採血等で簡便に評価し得るバイオマーカーはこれまでになく、また、Th2サイトカインを標的とした治療薬の開発が進められているものの、IL-5やIL-13を標的とした治療薬の効果は、気管支喘息症例の一部でしか認められていない。我々は、マウスの研究から、補助シグナル分子CD27陰性CD4陽性T細胞がアレルギー性炎症の新規バイオマーカーと成り得る可能性を見出し、さらには、CD27のリガンドであるCD70に対する抗体がTh2細胞への分化を直接標的とする治療に成り得る可能性を見出している。本研究では、気管支喘息症例のバイオマーカーとしてのCD27陰性CD4陽性T細胞の可能性を明らかにすることを目的としている。平成25年度、26年度は、212症例より検体を採取した。末梢血液中CD27陰性CD4陽性T細胞数は、重症度、治療ステップ、Asthma Control Testスコア、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)、呼吸機能検査との相関を認めなかった。一方で、CD27陽性CD4陽性T細胞は、末梢血好酸球数、罹病期間、BMI、%FEV1.0、%PEFと弱い正の相関を認めた。また、血清中のペリオスチン、テネイシンCをELISAにて測定した結果では、両者は弱い正の相関を認め、血清ペリオスチンは、FEV1、PEFと弱い負の相関、末梢血好酸球数、FeNO、年齢、発症年齢と弱い正の相関を認め、血清テネイシンCは末梢血好中球数との弱い正の相関を認めた。さらに、血清ペリオスチンとテネイシンCが共に高値の群においては、CD27陰性CD4陽性T細胞数と血清テネイシンCとの間に正の相関を認め、血清テネイシンCが低値の群においては、CD27陰性CD4陽性T細胞数と血清ペリオスチンとの間に正の相関を認めた。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度、26年度は、212症例で採血を実施し、CD27陰性/陽性CD4陽性T細胞をフローサイトメトリーで解析した。また、174症例においては、ペリオスチン、テネイシンC をELISAにて測定した。結果、上述の如くの結果を得ている。症例集積は順調に進展しており、弱い相関ではあるが、相関も認めているため、おおむね順調に進展しているとした。
現状では、CD27陰性CD4陽性T細胞は、重症度、治療ステップ、Asthma Control Testスコア、呼吸機能検査等との相関を認めないことから、病勢を反映するバイオマーカーとしての期待は低い。また、少数ながらCOPD症例との比較も実施したが、喘息症例との有意差は得られなかった。しかし、一方で、マウスの研究成果に反してCD27陽性CD4陽性T細胞と末梢血好酸球数、罹病期間、BMI、%FEV1.0、%PEFとの間に相関を認めており、病勢を反映するバイオマーカーとして、さらなる症例の集積を推進する。また、血清ペリオスチンと末梢血好酸球数、血清テネイシンCと末梢血好中球数とに相関を認め、血清ペリオスチンとテネイシンCが共に高値の群においては、CD27陰性CD4陽性T細胞数と血清テネイシンCとの間に正の相関を認め、血清テネイシンCが低値の群においては、CD27陰性CD4陽性T細胞数と血清ペリオスチンとの間に正の相関を認めた。CD27陰性CD4陽性T細胞と線維化マーカーとの関連を明らかにするために、さらなる解析を推進する。さらには、自然リンパ球とT細胞との関係にも焦点をあて、フローサイトメトリーによる自然リンパ球の解析を追加する。これらにより、喘息の新規バイオマーカー、サロゲートマーカーの開発に留まらず、新たなフェノタイプ・エンドタイプの構築を推進する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件)
Respir Res
巻: 16 ページ: 48
10.1186/s12931-015-0207-5.
Allergol Int
巻: 63 ページ: 37-47
10.1111/aor.12350.
アレルギー
巻: 63 ページ: 1241-1249
臨床呼吸生理
巻: 46 ページ: 23-26