研究課題/領域番号 |
25461171
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
辻 隆夫 東京医科大学, 医学部, 客員講師 (30459664)
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研究分担者 |
青柴 和徹 東京医科大学, 医学部, 教授 (60231776)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | COPD / 肺気腫 / 皮下脂肪 / やせ / 血管新生 / 内臓脂肪蓄積 / 糖代謝異常 / 高二酸化炭素血症 |
研究実績の概要 |
目的1:血管内皮障害によるCOPDにおける皮下脂肪減少の機序の解明 タバコ煙曝露によるCOPDマウスの皮下脂肪量減少の機序として、MMP-12活性亢進→エンドスタチン増加→VEGF減少→血管量減少→脂肪量減少、を皮下脂肪組織において同定し論文報告した(Tsuji T,et al. Am J Respir Cell Mol Biol 51:822-829, 2014)。エラスターゼ気道内注入によるCOPDモデルマウスの皮下脂肪量減少の機序として、同様に血管新生の低下が関与する事を同定し論文報告した(Tsuji T,et al. Prostaglandins Other Lipid Mediat 112:9-15, 2014)。 目的2:皮下脂肪減少がCOPDの全身併存症の原因となる仮説の証明 エラスターゼ気道内注入によるCOPDマウスにおいて、皮下脂肪量減少とともに、内臓脂肪組織の脂肪細胞のサイズ増加や内臓/皮下脂肪量比の上昇などの異所性脂肪の蓄積、及びインシュリン感受性低下に伴う糖代謝異常を認めた。機序として、血管新生低下に伴う脂肪量減少による皮下脂肪組織のエネルギー貯蔵能力低下を考え、血管新生刺激剤であるEP2受容体作動薬の全身投与が異所性脂肪蓄積及びインシュリン感受性低下を改善することを同定した。今後のHumanにおける検討を目的とし、当院倫理委員会の承認のもとCOPD症例10例、非COPD症例10例の皮下及び内臓脂肪組織の集積を完了した。 in vitroにて、ヒト由来内臓脂肪細胞を高CO2環境下で培養し内臓脂肪細胞の過形成を認めた。機序として、高CO2血症→soluble adenyl cyclaseの活性化→cAMPの上昇→adipogensis亢進を考えた。やせを認めないCOPD患者の内臓脂肪量増加の機序として高CO2血症の関与が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的1:血管内皮障害によるCOPDにおける皮下脂肪減少の機序の解明 タバコ煙曝露とエラスターゼ気道内注入による異なる2つのCOPDモデルマウスを用い、COPDにおける皮下脂肪量減少の機序に血管新生低下が関与する論文報告を行なった。これにより、COPDの全身併存症である皮下脂肪量減少を、血管内皮障害説によって説明する仮説をin vivoにおいて強固にした。in vivoの結果を臨床応用へ発展すべく、当院倫理委員会の承認の下にCOPD症例10例、非COPD症例10例の皮下及び内臓脂肪組織の集積を完了した。目的1への達成度は順調に進展している。 目的2:皮下脂肪減少がCOPDの全身併存症の原因となる仮説の証明 エラスターゼ気道内注入によるCOPDマウスにて、皮下脂肪量減少とともに異所性脂肪の蓄積及び糖代謝異常を認め、血管新生刺激剤であるEP2受容体作動薬の全身投与にて改善することを同定した。以上より、血管内皮障害による皮下脂肪減少がCOPDの全身併存症の原因となる仮説を強固にし、血管新生刺激剤の全身投与がCOPD併存症の治療薬になる可能性を呈示した。動脈硬化性病変の検討に関しては、エラスターゼ気道内注入し高脂肪食投与したアポEノックアウトマウスにても動脈硬化性病変作成は難しく、報告された他論文(Khedoe PP, et al. PLoS One 8(11):e80196, 2013)と同様であった。 内臓脂肪細胞を用いたin vitroの検討により、内臓脂肪増加の機序として高CO2血症が関与する結果を得た。これは、やせをしめさないCOPD患者の内臓脂肪蓄積の機序の一つと考えられ、COPD併存症を脂肪組織の観点から説明し(本研究の独創性)、COPDの併存症治療に結びつける(本研究の方向性)に沿う結果であり、達成度は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
目的1:血管内皮障害によるCOPDにおける皮下脂肪減少の機序の解明 2報の論文にて報告したin vivoにおける理論をhumanにおいて立証していく。すなわち、当院倫理委員会の承認の下に集積を完了したCOPD症例10例、非COPD症例10例の皮下脂肪組織において、血管床の減少がCOPDにおいて有意に認められるか免疫組織学的手法を用いて検討する。同時に内臓脂肪サイズなど異所性脂肪蓄積について検討する。皮下脂肪組織の血管床減少の機序として、in vivoにおいて同定した理論(MMP-12活性亢進→エンドスタチン増加→VEGF減少→血管量減少→脂肪量減少)がhumanにて説明出来るか免疫組織学的手法を用いて検討する。また、血管内皮障害の原因としてDNA障害の関与も併せて検討し、DNA障害の指標であるγH2AXの発現がCOPDにおいて血管内皮細胞で亢進するか検討を行い、いずれも学会発表を目指す。 目的2:皮下脂肪減少がCOPDの全身併存症の原因となる仮説の証明 エラスターゼ気道内注入によるCOPDマウスにおいて、皮下脂肪量減少とともに、内臓脂肪組織の脂肪細胞のサイズ増加や内臓/皮下脂肪量比の上昇などの異所性脂肪の蓄積、及びインシュリン感受性低下に伴う糖代謝異常を認めた。機序として、血管新生低下に伴う脂肪量減少による皮下脂肪組織のエネルギー貯蔵能力低下を考え、血管新生刺激剤であるEP2受容体作動薬の全身投与により異所性脂肪蓄積及びインシュリン感受性低下が改善しうることを同定した。近日中の論文投稿を目指す。 ヒト由来内臓脂肪細胞を用い、高CO2血症→soluble adenyl cyclaseの活性化→cAMPの上昇→adipogensis亢進の仮説を基に機序に関する検討をすすめ、本年度の学会報告、また論文投稿準備を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26使用分の端数金額が残っているためである、このため金額が1万円程度と小額である。
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次年度使用額の使用計画 |
金額が1万円程度と小額であるため、血管内皮障害によるCOPDにおける皮下脂肪減少の機序の解明のhumanにおける立証、に必要な物品費として使用する計画である。
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