研究課題/領域番号 |
25461175
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
寺崎 泰弘 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50332870)
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研究分担者 |
松井 祥子 富山大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40334726)
寺崎 美佳 日本医科大学, 医学部, 助教 (50372785)
三宅 弘一 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90267211)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リンパ球増殖性肺疾患 / IgG4関連肺病変 / Castleman’s disease / RA肺モデル / D1CCマウス / 高濃度水素分子 / Sp-D / 抗酸化作用 |
研究実績の概要 |
IgG4関連肺病変は、VATSでの肺病理組織が得られた症例群の中で他職器合併典型13例での検討で、リンパ路を首座とするリンパ球形質細胞浸潤性の肉芽性病変であることを報告したが(Respirology. 2013 Apr;18 (3): 480-7.)、鑑別が問題となるMulticentric Castleman’s disease (MCD)の症例群の検討では肉芽性変化が乏しく硝子化線維化を伴う濾胞形成性のリンパ球形質細胞浸潤増殖性病変で、襄胞性変化を来す点など違いがある亊を報告し(病理と臨床 2014;32;10;1109-1116)、2疾患の多数例でのまとまった肺病理比較報告はないので更に英文論文を投稿中である。 また連携研究者の金澤が樹立したD1CCマウスで2型コラ一ゲンの皮下注射投与を行いマウスRA肺モデルを作成し、病理形態学的に解析と高濃度水素分子(H2)水飲水の病変に対する効果を以下のように報告した(びまん性肺疾患に関する調査研究 平成26年度研究報告書)。10ヵ月の早期病変では気管支や血管、胸膜の周囲の広義間質にリンパ球、形質細胞、好酸球、組織球の浸潤がみられ、肺胞領域にも散在性、小血管中心性にリンパ球浸潤や周囲気腔内の組織球集族とSp-C陽性の2型肺胞上皮の過形成を伴う早期の線維化病変が見られた。18ヵ月の後期進行病変では広義間質から肺全体に細胞浸潤と腔内線維化を伴う進行した線維化病変がみられた。ブレオマイシン肺線維症マウスモデルは急性―亜急性の病態で進行が一過性であり、D1CCマウスRA肺モデルは病変の質、病変のできてくる期間、病変分布も大きく異なっていた。D1CC マウスRA肺モデルでは、血中のSp-D上昇や胸部CT画像の肺野濃度上昇が10ヵ月でみられたが、高濃度H2水投与で有意に抑制された。組織学的にも広義間質の炎症細胞浸潤や肺胞領域の組織球集族と線維化所見はH2水治療で抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IgG4関連の肺病変と鑑別が問題となるMulticentric Castleman’s disease (MCD)の症例群の検討では肉芽性変化が乏しく硝子化線維化を伴う濾胞形成性のリンパ球形質細胞浸潤増殖性病変で、襄胞性変化を来す点など違いがある亊を報告し(病理と臨床 2014;32;10;1109-1116)、更に英文論文を投稿中である。 D1CCマウスで2型コラ一ゲンの皮下注射投与を行いマウスRA肺モデルを作成し、病理形態学的に解析と高濃度水素分子(H2)水飲水の病変に対する効果を検討した。10ヵ月の早期病変では気管支や血管、胸膜の周囲の広義間質にリンパ球、形質細胞、好酸球、組織球の浸潤がみられ、肺胞領域にも散在性、小血管中心性にリンパ球浸潤や周囲気腔内の組織球集族とSp-C陽性の2型肺胞上皮の過形成を伴う早期の線維化病変が見られた。18ヵ月の後期進行病変では広義間質から肺全体に細胞浸潤と腔内線維化を伴う進行した線維化病変がみられた。ブレオマイシン肺線維症マウスモデルは急性―亜急性の病態で進行が一過性であり、D1CCマウスRA肺モデルは病変の質、病変のできてくる期間、病変分布も大きく異なっていた。D1CC マウスRA肺モデルでは、血中のSp-D上昇や胸部CT画像の肺野濃度上昇が10ヵ月でみられたが、高濃度H2水投与で有意に抑制された。組織学的にも広義間質の炎症細胞浸潤や肺胞領域の組織球集族と線維化所見はH2水治療で抑制された。以上の結果を厚労省びまん性肺疾患に関する調査研究 平成26年度研究報告書に報告し、D1CCマウスRA肺病変モデルはその全体像を含めてヒトのRA肺病変に類似しており、広くヒトの進行性慢性間質性肺炎の病態解明の手段としても多大な貢献が期待できる事、血清Sp-D値、胸部CT画像は組織の肺胞上皮障害所見を反映しており、マウスモデルの肺障害の良いマーカーになる事、高濃度H2水治療によりRA肺病変形成が抑制され、副作用のない治療薬としての臨床応用の可能性を示した事。以上から。
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今後の研究の推進方策 |
今後はヒトの肺病変のパラフィン標本、特に局所的な病巣のマイクロダイセクションによるサンプリング検体を用いた遺伝子的、LC・MSによる蛋白の解析を進め病態の更なる解析を行う。 マウスモデルは経時的な変化をCT画像や病理形態学的また生化学的な解析を進める。特に高濃度H2水治療効果に関しては抗酸化、抗炎症効果に着目して早期モデルを中心に病態の更なる検討を行ぅ。 以上、ヒト肺病変やマウスモデルを用いリンパ球浸潤性肺疾患での線維化病変の解明と治療法の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
IgG4、MCD, RA肺病変のパラフィン切片からの遺伝子や蛋白解析がマイクロダイセクションを用いたサンプリングのため、時問がかかり解近が遅れている。また、リウマチ肺モデルマウス作製には1年近くの時問がかかる。 今後、マイクロダイセクションのサンプルの遺伝子や蛋白解析にはアレイ解析やLC/MS解析でコストがかかり、またモデルマウス 解析にもCT解析を含めた経時的な形態と生化学的解析、特に酸化ストレス関連の解析は必須であり、病態の更なる検討を行うためコストがかかると思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
マイクロダイセクションを用いてIgG4, MCD、RA肺病変のリンパ球集族病巣や活動性線維化部位などサンプリングRNA抽出し遺伝子解析をし、また蛋白も抽出しLC/MS解析を行う。発現が優位な因子について免疫染色、in situ hybridization,PCRなどで解析を進める。モデルマウス解析では動物用CT装置を用い経時的な肺病変の画像的検索、免疫染色を治療群、非治療群にわけて行う。リンパ球などの炎症細胞、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞などに注目し、共魚点レー ザ一顕微鏡、電顕、免疫電顕なども駆使し、上皮や内皮細胞の傷害、apotosis、再生、間質の反応、嚢胞形成などの病態を検索する。肺の凍結検体、血清などから、サイトカイン、転写因子、酸化関連因子、蛋白分解酵素などを蛋白レベル、遺伝子レベルで解析する。
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