研究課題/領域番号 |
25461184
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
平 敬宏 東邦大学, 医学部, 教授 (70197036)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DJ-1タンパク質 / 酸化ストレス / 慢性閉塞性肺疾患 / 細胞死 / シグナル伝達 / 薬物輸送体 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画に基づき、ヒト気管支上皮由来細胞Beas2Bおよびヒト肺胞基底上皮由来細胞A549にsiRNA発現プラスミドを導入し、DJ-1タンパク質発現抑制細胞株、および変異体DJ-1タンパク質過剰発現株の酸化ストレス応答性、細胞増殖性を検討した。 その結果、DJ-1タンパク質発現抑制株では、培養の進行に従い発現抑制が解除される傾向が見られた。そこで、発現抑制株作製に用いたプラスミドの薬剤選択性を変え、安定した発現抑制株の作成に取りかかっている。 安定抑制株樹立後、タバコ煙抽出液、酸化剤による細胞生存性の検討に入る。
並行して、Beas2B, A549の他に、ヒト神経芽腫由来細胞SH-SY5Y細胞で、DJ-1タンパク質の薬物輸送体への機能研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、DJ-1タンパク質の肺胞および気管支での酸化ストレス防御機構とCOPDを代表とした呼吸器疾患発症への関与を明らかにすることを目的としている。そのため、ヒト肺胞およびヒト気管支由来培養細胞で、発現型si-RNAプラスミド導入によるDJ-1タンパク質発現抑制株の樹立が必須である。候補株が、かなりの数得ることが出来たが、当初はDJ-1タンパク質の発現抑制が確認されたものの、数代の培養後に発現抑制が解除され、野生型株と同程度のDJ-1タンパク質の発現が認められた。すなわち、安定的DJ-1タンパク質発現抑制株の樹立が行えなかった。そのため、予定していた酸化ストレス負荷などの実験計画が予定通り実行できなかった。しかしながら、その他の予備的な知見は得ることが出来ているため、やや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初からの研究計画に従い、DJ-1タンパク質発現抑制株の樹立を行う。今年度は発現抑制株作製の際に薬剤選別方法を検討し直す。 昨年度はハイグマイシンBによる選別を行ってきたが、今年度はさらに、ネオマイシン、ピューロマイシンなど他の選別方法を同時に行う。また、si-RNA配列の再検討もすすめている。 安定な発現抑制株樹立後 1、タバコ煙抽出液などによる酸化ストレスに対するDJ-1タンパク質の機能解析。 2、安定発現抑制株と野生株間でのmRNAの発現差をDNAマイクロアレイで解析し、DJ-1の新たな標的遺伝子、シグナル伝達系への関与を検討する。 3、発現抑制株と野生株で発現変異している遺伝子の転写制御に対するDJ-1タンパク質の機能メカニズムを明らかにする。 これらの研究に加えて、酸化ストレス負荷時における薬物輸送体の機能変異の研究を発展させる。具体的な研究項目として、1、薬物輸送体機能へのDJ-1タンパク質の機能解析。2、DJ-1タンパク質の酸化ストレス変性による薬物輸送体機能変化。3、薬物輸送体機能亢進と酸化ストレス傷害回避機構の関与。などを解析し、酸化ストレス回避と薬物輸送体の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、安定的DJ-1タンパク質発現抑制株を樹立し、ストレス負荷による細胞障害性にたいするDJ-1タンパク質機能を解析する予定であったが、樹立したタンパク質発現抑制株の再現性に問題があり、引き続いて計画していたストレス負荷実験、DNAマイクロアレイ解析を保留としたため、経費が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、昨年度実施予定の研究課題の1、各種ストレス負荷実験、2、DJ-1タンパク質発現抑制により発現が変化する遺伝子の探索を実行する。そのために、研究課題1で必要となるストレス負荷試薬の購入およびストレスを負荷させるための実験装置の購入。2の研究課題を実行するためにDNAマイクロアレイ外部委託解析を行うため、昨年度予算の使用を計画している。 また、研究課題2の結果から、DJ-1タンパク質発現低下により発現変動する遺伝子の転写制御メカニズムを検討するため、レポーター実験、タンパク質-DNA結合実験を予定している。この研究と昨年度から予備実験を始めている新たな研究課題である、DJ-1タンパク質の薬物輸送体への関与の研究のために本年度予算の使用を計画している。
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