研究課題/領域番号 |
25461185
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
花岡 正幸 信州大学, 医学部, 教授 (20334899)
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研究分担者 |
安尾 将法 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (20402117)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺気腫 / タバコ抽出液 / ラット / ピオグリタゾン / PPARγ |
研究概要 |
最初に、タバコ抽出液(cigarette smoke extract; CSE)によるラット肺気腫モデルの作製に取り組んだ。ケンタッキー大学のリファレンスシガレット1本分の煙をリン酸緩衝液(PBS)1 mLに溶解させ、独自のシステムを用いてCSEを作製した。CSE 1 mLを週1回、第1、8、15日にオスSDラット(6週齢、体重200-250 g)の腹腔内へ投与し(n = 12)、第21日に麻酔下に肺組織を摘出した。Hematoxylin and eosin(HE)染色を行い、肺気腫の指標として、mean linear intercept(MLI)およびdestructive index(DI)を計算した。コントロールラット(PBSを腹腔内投与、n = 6)との比較では、MLIに有意差を認めたものの、DIはばらつきが大きく有意な差は得られなかった。すなわち、既報と異なり、気腔の拡大は有意であるが肺胞の破壊は明らかでなく、確実に肺気腫を再現することはできなかった。次に、このモデルにおいて、peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)γのアゴニストであるピオグリタゾンを用いた予備実験を行った。ピオグリタゾンは、低用量(1.0 mg/日、n = 6)あるいは高用量(2.5 mg/日、n = 7)を、第1日から第21日まで連日経食道的に投与した。その結果、高用量ピオグリタゾン群はコントロール群と比較し、MLIの有意な減少を認めたが、低用量群あるいはDIにおいては有意差を認めなかった。ピオグリタゾンの肺気腫抑制効果が期待できる結果ではあるが、肺気腫の形成が不十分と判断し、CSEの投与方法を変更したモデルの作製に取り掛かっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既報の方法では、タバコ抽出液(cigarette smoke extract; CSE)による肺気腫の形成が不十分なため、CSEの投与方法の変更を検討している。具体的には、CSEの投与回数の上乗せ、あるいは投与期間の延長が考えられる。ラットの肺気腫モデルを完成させた上で、各種薬剤の抑制効果の検討に入る予定である。このため、当初計画よりは達成度がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、タバコ抽出液(cigarette smoke extract; CSE)によるラットの肺気腫モデルを確立する。ケンタッキー大学のリファレンスシガレット1本分の煙をPBS 1 mLに溶解させ、CSEを作製する。従来法に加え、CSE 0.2 mLを5回/週、3週間にわたりオスSDラット(6週齢、体重200-250 g)へ腹腔内投与するモデル、およびCSE1.0 mLを1回/週、6週間にわたり同ラットへ腹腔内投与するモデルを作製する。最も気腫化が顕著であったモデルを用いて、ピオグリタゾン(PPARγアゴニスト)、次にシルデナフィル(選択的PDE-5阻害薬)の肺気腫抑制効果を検討する。ピオグリタゾンおよびシルデナフィルは、経食道的に連日投与する。3週あるいは6週後に肺組織を摘出し、組織学的検討、アポトーシスの検討、蛋白分解酵素の検討、炎症性サイトカインの検討、酸化ストレスの検討、肺構造維持プログラムの検討などを行い、CSE単独群と比較する。次年度は、特に肺の組織学的検討に重点を置き、それ以外の検討も逐次行っていく。
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