研究課題/領域番号 |
25461185
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
花岡 正幸 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20334899)
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研究分担者 |
安尾 将法 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (20402117)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺気腫 / ヒト臍帯静脈内皮細胞 / 血管内皮成長因子受容体阻害薬 / 低酸素 / ラット |
研究実績の概要 |
タバコ抽出液(cigarette smoke extract: CSE)による肺気腫の形成が不十分なため、ヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell: HUVEC)による肺気腫モデルへの切り替えを行った。 6週令雄性SDラットに対しHUVECを投与し、3週後の肺気腫形成を検証した。Passage 1(P1)のHUVECを培養、継代し、実験に用いた。コントロール群(①Freund’s Complete Adjuvant 250μl皮下注 2匹)、HUVEC群(②Titer Max Gold;(以下TM)125μl + P4 HUVEC 100万個腹注 2匹、③TM 125μl + P4 HUVEC 100万個皮下注 2匹、④Freund's Complete Adjuvant 250μl + P4 HUVEC 100万個腹注 2匹)の4群に分けて検討した。①、④の群に対しては、booster効果の目的で、Freund’s Incomplete Adjuvant 250μl + P4 HUVEC 100万個を追加投与した。9週令となったラットを解剖し肺標本のhematoxylin and eosin(HE)染色を行い、肺気腫の指標となるmean linear intercept(MLI;肺胞1個あたりの平均径)を計測した。MLIはそれぞれ①93.5μm、②79.9μm、③80.8μm、④71.1μmであった。MLIで有意な気腔の拡大はみられず、肺気腫の形成には至っていないと考えられた。 既報のような肺気腫形成に至らない原因として、抗体形成にさらに時間を要する可能性が考えられたため、標準である6週令HUVEC投与・9週令解剖群に加え、6週令HUVEC投与・12週令解剖群を作製した。両群ともに、HUVEC群はコントロール群に比べて、MLIの増大傾向を認めたが、有意差はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
HUVECを用いたラット肺気腫モデルの確立のために2回の検討を行ったが、残念ながら有意な気腔の拡大所見が得られなかった。そこで、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)受容体阻害薬(SU5416)と低酸素(hypoxia)による肺気腫モデルの作製に着手している。6週令雄性SDラットにSU5416(20 mg/kg)を1回皮下投与し、FIO2 10%の低酸素チャンバーにて、①3週間、②6週間、③9週間、それぞれ飼育する。肺組織を摘出しHE染色を行い、MLIおよびdestructive index(DI)を計測する。
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今後の研究の推進方策 |
MLIおよびDIを、既報の正常ラットおよび肺気腫ラットと比較し、肺気腫の完成を確認したのち、以下の方法を用いて発症機序の解明を行う。 1. 炎症性サイトカインの検討:血清および肺のホモジネートを用い、肺気腫と関連するtumor necrosis factor(TNF)-αおよびinterleukin(IL)-1βの濃度をELISA法にて測定する。 2. 酸化ストレスの検討:血清および肺のホモジネートを用い、生物学的抗酸化能(biological antioxidant power: BAP)を測定する。 3. アポトーシスの検討:肺組織のTUNEL染色を行い、TUNEL陽性細胞の数をカウントし、アポトーシス指数を計算する。さらに、caspase-3の免疫染色とWestern blotting法によるアポトーシスの定量を行う。 4. 肺構造維持プログラムの検討:VEGF、transforming growth factor beta 1(TGF-β1)、あるいはToll-like receptor 4(TLR4)といった肺構造維持プログラムへの関与が推定されている因子を検討する。免疫染色、ELISA法、フローサイトメトリーによる解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物モデルの作製に時間がかかっている。タバコ抽出液(CSE)によるラット肺気腫モデルに取り組んだが、気腔の拡大は認めたものの、肺胞の破壊は明らかでなく、確実な肺気腫の形成に至らなかった。そのため、新たなモデルを作製する必要があると考え、次年度にかけ検討する方針とした。
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次年度使用額の使用計画 |
血管内皮成長因子(VEGF)受容体阻害薬と低酸素曝露によるラット肺気腫モデルに切り替え、発症機序の解明と治療ターゲットの検索を行う。次年度使用額は、ラットおよびVEGF受容体阻害薬(SU5416)を購入する費用に充てる予定である。
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