気管支喘息の病態においては樹状細胞(DC)が2型CD4陽性T細胞への抗原提示の中心的役割を担っている。我々はこの肺DCをCD8陽性T細胞(CTL)が抗原特異的に障害 (killing) する事を報告した。 本研究では喘息における肺DCをアレルゲン特異的に障害するCD8陽性T細胞を誘導するため、抗原蛋白によるDCワクチン療法を行う。また、DCのクロスプレゼンテーションを強力に促進し、アレルゲン特異的CD8陽性T細胞の誘導を強化するため、生分解性ポリマー (Polylactic coglycolic acid: PLGA) を用いたナノ粒子をアレルゲン蛋白と共に投与する。このPLGAとアレルゲン蛋白を用いたワクチン療法により、喘息による好酸球性気道炎症の改善を目的とする。 今回の研究においては卵白アルブミン (OVA) 誘導マウス喘息モデルを使用するが、OVAのドミナントCTLエピトープ (SIINFEKL) に特異的なT細胞レセプターを有するOT-1マウスのリンパ球とマウス骨髄DCを用いたin vitroのリンパ球増殖試験では、粒子径の異なる複数のPLGAがOVAアレルゲン蛋白のクロスプレゼンテーション能を亢進することを確認した。次に、喘息モデルマウスにPLGA + OVA を経鼻投与したが、in vivoでは抗原特異的CD8陽性T細胞の誘導と好酸球性気道炎症の改善は認められなかった。また、PLGA + SIINFEKLの投与も試みたが同様の結果であった。in vivoにおいては、PLGA存在下でのDCへの抗原の受け渡し、あるいはDCクロスプレゼンテーションの促進効果に何らかの障害があるものと推察された。
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