研究課題
本研究は、肺線維症に対して、吸入法を用い、核酸医薬となるRNAi創薬を目指すものである。しかしながら、siRNAに関する主たる基本特許は欧米に取得されており、実験的研究を別にすれば、現在、日本におけるsiRNA創薬は大変困難な状況となっている。そこで、申請者らは、それらの特許を回避可能な方法を考えつつ実験を行ってきた。ブレオマイシン肺線維症マウスモデルにおいて、線維化に関与するサイトカインであるTGF-βをターゲットとした、siRNAを一部DNAに置き換えたキメラ型siRNAを経気道的に導入しその線維化抑制効果、生存期間延長効果、酸素化能改善効果を確認した(Am J Respir Cell Mol Biol.46:397-406,2012)。さらに、よりヒト疾患モデルに近づけるために、世界で初めてヒトTGF-βの全長cDNAをマウス肺に発現させたTransgenic mouse(TGマウス)を作成し、自然発症肺線維症モデルの作成に成功した(PLoS One.2012;7(8):e42655.)。このTGマウスを用いた実験でもヒト-マウス共通キメラ型siRNAは同様の効果を示し、今後の、ヒトへの臨床応用の可能性を確認した。申請者らは、さらに日本独自の創薬を目指すために、RNAの構造開発を行い、RNAiを引き起こすことが可能な新規構造RNA(PLoS One.2012;7(8):e42655.)の開発に成功した。申請者らは、本研究において、このTGマウスモデルを使用し、線維化の機構を探るとともに、さらに、肺線維症に効率に合併する肺癌に関しての発癌機構の解明及び、それに対するRNAi治療法の検討を行う。さらに申請者らは、ヒトへの臨床応用を前提としたsiRNA担体の開発、吸入システムの開発も行う。
2: おおむね順調に進展している
新規構造RNAを用い、肺線維症おより急性肺障害モデルにおいてのRNAi確認実験は順調に進行している。
さらに研究を推し進め、非臨床試験にまでもっていきたい。その後はさらに肺癌などの他疾患への応用も目指したい。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol.
巻: 306(11) ページ: 1006-1015
10.1152/ajplung.00015.2014.