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2013 年度 実施状況報告書

間質性肺炎における新規炎症関連因子Angptl2の機能解明

研究課題

研究課題/領域番号 25461192
研究種目

基盤研究(C)

研究機関熊本大学

研究代表者

遠藤 元誉  熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (40398243)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード肺線維症 / ブレオマイシン / マクロファージ / Angptl2
研究概要

研究代表者はAngptl2が炎症性サイトカイン、活性酸素の産生促進、TGF-β経路を活性化することを明らかにしているが、間質性肺炎におけるAngptl2の役割、その詳細なメカニズムは不明であった。間質性肺炎におけるAngptl2の役割を明らかにするために、まずはヒト肺線維症患者の肺線維化部位におけるAngptl2の発現を免疫染色にて観察し、間質性肺炎の病態とAngptl2発現細胞の関連について検討した。間質性肺炎部位では、マクロファージ及びII型肺胞上皮細胞においてAngptl2の発現を認めた。また、マウスブレオマイシン肺線維症モデルを用いて、肺線維化形成過程におけるAngptl2の発現を検討した。肺線維症モデルが作成できているかを確認するために、経時的に肺組織のHE染色を行った。ブレオマイシン投与後、7日目~14日目において肺の線維化を強く認め、その後線維化は減少した。次に、経時的なAngptl2の発現解析を行った。肺組織におけるAngptl2 mRNAの発現をリアルタイムPCR法、気管支肺胞洗浄液中のAngptl2タンパクをELISA法にて測定した。野生型マウスの肺におけるAngptl2 mRNAの発現は、ブレオマイシン刺激後、7日目までは低下したが、その後上昇した。一方、気管支肺胞洗浄液中のAngptl2濃度は、ブレオマイシン投与後3日目にはやや上昇し、肺修復が促進される7日目以降は無刺激状態の気管支肺胞洗浄液と比較して大きく上昇していた。これらの結果より、ブレオマイシン肺線維症モデルにおいては、急性炎症増悪期には肺実質におけるAngptl2の発現は低下することが明らかとなった。一方、気管支肺胞洗浄液のAngptl2濃度は上昇していることより、Angptl2は修復過程において何らかの機能を有している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

マウスブレオマイシンモデルにおいて、安定した肺線維症モデルを作成するためには、一定以上の熟練度が必要とされ、またブレオマイシン投与後の観察期間が長くなるため、モデルを作成してからの解析には時間を要することが予想された。しかしながら、ブレオマイシンの投与法を工夫することにより、安定したモデル作成法が比較的早期に確立できた。今回作成したマウスブレオマイシンモデルの経過は、これまでに報告されているマウスブレオマイシンモデルの表現型と同じ経過であることが確認できた。また、ヒト肺線維症における肺組織の免疫染色では、肺胞マクロファージとII型肺胞上皮細胞においてAngptl2が発現していることが明らかとなった。マウスブレオマイシンモデルの肺組織におけるAngptl2の免疫染色は現在進行中であるが、予備実験において少なくとも肺胞マクロファージ、II型肺胞上皮細胞にはAngptl2が発現している結果を得ている。Angptl2を発現している細胞が、肺胞マクロファージ、II型肺胞上皮細胞であるかは、それぞれの特異的マーカーを用いて二重免疫染色を行う必要性があり、現在その準備も進めている。また、Angptl2の肺における機能が炎症のみならず修復にも関与している可能性が示唆されたことは、肺におけるAngptl2発現の重要性を意味しており、Angptl2ノックアウトマウスもしくはAngptl2トランスジェニックマウスにおける解析が必要であると考えられた。現在、Angptl2ノックアウトマウス、Angptl2トランスジェニックマウスを用いた実験準備を開始しており、これらの点に関しても当初の計画以上に解析が進んでいると考えている。

今後の研究の推進方策

本年度の結果より、肺線維症におけるAngptl2の発現パターンが明らかとなった。これまでAngptl2の機能は様々な疾患において解析が行われてきたが、その多くは炎症増悪因子として作用するものであった。しかしながら、マウスブレオマイシンモデルにおいてはAngptl2は炎症増悪因子というよりも、修復への関与が示唆されており、非常に興味深い。今後は、Angptl2ノックアウトマウスを用いたマウスブレオマイシンモデルを作成し、線維化の過程をより詳細に解析する予定である。また、マクロファージにAngptl2が発現していることより、骨髄系細胞におけるAngptl2の発現も線維化に関与している可能性が考えられる。そのため、wildマウスの骨髄をAngptl2ノックアウトマウスに移植、Angptl2ノックアウトマウスの骨髄をwildマウスに移植し、ブレオマイシンモデルを作成し解析を行う。Angptl2トランスジェニックマウスに関しては、研究代表者はAP2-Angptl2トランスジェニックマウスを保持している。AP2-Angptl2トランスジェニックマウスでは、主に脂肪組織、マクロファージにおいてAngptl2が強く発現している。そのため、AP2-Angptl2トランスジェニックマウスを用いたブレオマイシンモデルを作成し解析を行う。Angptl2ノックアウトマウス、AP2-Angptl2トランスジェニックマウスは現在繁殖中であり、マウス供給が可能になった時点でモデルを作成し解析を行っていく予定である。また、in vitroの実験として、wildマウス、Angptl2ノックアウトマウスのマクロファージを用いて、様々な刺激における肺線維化に関与する遺伝子発現の解析を行う予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Angiopoietin-like protein 2 accelerates carcinogenesis by activating chronic inflammation and oxidative stress.2014

    • 著者名/発表者名
      Aoi J, Endo M, Kadomatsu T, Miyata K, Ogata A, Horiguchi H, Odagiri H, Masuda T, Fukushima S, Jinnin M, Hirakawa S, Sawa T, Akaike T, Ihn H, & Oike Y.
    • 雑誌名

      Molecular Cancer Research

      巻: 12 ページ: 239-249

    • DOI

      10.1158/1541-7786.MCR-13-0336

    • 査読あり
  • [学会発表] Angptl2によって惹起される炎症による発がん制御メカニズム解明2013

    • 著者名/発表者名
      遠藤元誉、小田切陽樹、舛田哲朗、堀口晴紀、中野正啓、尾池雄一
    • 学会等名
      第72回 日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      20131003-20131005
  • [学会発表] 新規炎症関連因子ANGPTL2による肺がんの浸潤・転移分子機構2013

    • 著者名/発表者名
      遠藤元誉、本川郁代、羽藤泰
    • 学会等名
      第53回 日本呼吸器学会学術講演会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム
    • 年月日
      20130419-20130421

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公開日: 2015-05-28  

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