研究課題
本研究では、間質性肺炎におけるAngptl2の役割を明らかにすることを目的とした。前年度までの研究成果により、Angptl2 KOマウスではブレオマイシン刺激による線維化が増悪することを見出しており、肺におけるAngptl2の発現が肺の線維化抑制に重要である可能性を見出した。本年度は、肺のどの細胞でAngptl2が発現し、それがどのようなメカニズムを介して線維化病態形成の増悪に関与しているか解析を行った。今回、マウス組織のAngptl2発現を解析するために、新たにウサギ抗Angptl2モノクローナル抗体を樹立した。本抗体は、マウスAngptl2タンパクに対して効率よく反応することを確認した。この抗Angptl2抗体を用いて無刺激状態のマウス肺の免疫染色を行い、Angptl2はI型肺胞上皮細胞、II型肺胞上皮細胞にて発現していることを見出した。また、ブレオマイシン投与後14日目におけるマウス肺の免疫染色を行った。ブレオマイシン刺激によって誘導された肺線維化部位において、Angptl2は、I型、II型肺胞上皮細胞のみならず、一部の線維芽細胞、マクロファージにも発現していることを見出した。さらに、無刺激の野生型マウスとAngptl2 KOマウスの肺のRNAを抽出し、高速シーケンス解析を行った。Angptl2 KOマウスの肺においては、野生型マウスと比較してサイトケラチンの発現が増強しており、扁平上皮化生様の変化が生じていることを見出した。以上の結果より、肺胞上皮細胞におけるAngptl2の発現は、肺の恒常性を維持するために何らかの役割を担っている可能性が考えられた。今後は、Angptl2の下流シグナル解析を行い、肺におけるAngptl2発現と恒常性維持促進メカニズムについて明らかにする必要があると思われる。
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