研究課題/領域番号 |
25461200
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
丸岡 秀一郎 日本大学, 医学部, 助教 (80599358)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抗フラジェリン抗体 / 気道上皮細胞 / 網羅的遺伝子発現解析 |
研究概要 |
本研究の目的は、申請者らが見いだしたフラジェリンによる喘息病態がどのようなメカニズムで起こっているのかを明らかにし、診断治療につながる臨床的意義を見いだすことである。平成25年度は、下記に挙げた研究項目1. 2. について研究を実施し、以下の研究計画の進展を得た。 研究項目1.気管支喘息患者の血清中抗フラジェリン抗体の臨床応用の検討 気管支喘息患者から血清を採取するとともに臨床データ(呼吸機能検査、血清中のアレルゲン特異的IgE、呼気中一酸化窒素、喀痰中好酸球数など)の収集を行い、データベースを構築した。平行して血清中抗フラジェリン抗体の測定系を確立し、現時点で健常者15名および気管支喘息患者70人の血清中抗フラジェリン抗体の測定を完了した。 研究項目2.フラジェリンによる気管支喘息発症メカニズムを気道上皮細胞に焦点をあてて解明する。 まず、フラジェリンをアジュバントとして用いたマウス気管支喘息モデルを確立した。喘息病態を表す気道過敏性検査、肺胞洗浄液中の好酸球数及びサイトカイン産生、肺組織中のムチンの産生、血清中抗原特異的IgE測定などすべての測定系が安定して行えることを確認した。次にレーザーマイクロダイセクション法による気道上皮細胞の切り出し及びRNA抽出、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析など一連の解析法の確立を試みた。そのために、フラジェリンモデルよりも強力でより安定してアレルギー性気道炎症を誘導することができるハウスダストダニ抗原(HDM)を用いたマウス気管支喘息モデルを用いて予備実験を行った。その結果、気道上皮細胞の切り出しから網羅的遺伝子発現解析まで行うことが可能となった。HDM刺激により気道上皮細胞株に発現増強することが既に報告されている気管支喘息関連遺伝子群が同様に認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気管支喘息患者の血清中抗フラジェリン抗体測定系と臨床データシステムが確立したことにより臨床データと抗フラジェリン抗体量との相関関係の解析が容易となることが考えられる。また、HDMを用いたマウス気管支喘息モデルではあるが、気道上皮細胞の切り出し、RNAの抽出、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析までの系を確立でき、更に抗原感作過程の経時的遺伝子解析も可能となったことは、平成26年度にフラジェリンを用いた研究項目を進める上で大きな進展であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に確立した臨床研究データシステム、動物モデル、遺伝子解析を用いて、臨床研究と基礎研究を平行して行う。 臨床研究は、更に多くの検体を採取し、臨床データと抗フラジェリン抗体量との相関関係や治療介入による抗フラジェリン抗体の変動などを検証する。これによりフラジェリンの臨床的な意義を見いだす予定である。 基礎研究では、フラジェリンによる喘息モデルマウスの肺組織および気道上皮細胞からRNAを抽出し、網羅的遺伝子発現解析を行い、標的遺伝子を同定する予定である。平行して、フラジェリン受容体であるToll like recepto5の中和抗体による抑制効果を検討する。また、申請者は、気道上皮のバリア機能の脆弱性が気管支喘息発症の1要因と考えており、フラジェリンによる気道上皮バリア機能形成への影響を気道上皮細胞株を用いて解析する予定である。更にマウスにより同定した標的遺伝子が気道上皮バリア機能形成にどのように関与するかを検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定よりも消耗品(試薬)の使用が、少なくすんだため。 次年度に繰り越して使用する。
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