研究課題/領域番号 |
25461205
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
戸恒 和人 東北大学, 薬学研究科(研究院), 客員教授 (10217515)
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研究分担者 |
今井 潤 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40133946)
高橋 和広 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80241628)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 循環器・高血圧 / 生理活性 / 発現・制御 / 腎障害 / プロレニン受容体 |
研究実績の概要 |
平成27年度は以下の点を明らかにした。 1. 最近の研究でProレニン受容体((P)RR)はWnt/β-cateninシグナル伝達系に関与していることが分かってきている。一方で、Wnt/β-catenin 伝達系は膵管癌(PDAC)の増殖に関係していることが知られている。そこで、(P)RRと膵癌発症との関係を検討した。結果、膵癌患者の血中s(P)RR濃度は正常人に比して有意に高値であることを見出した。また、PDAC細胞に(P)RRのsiRNAを作用させるとWnt/β-catenin 伝達系は抑制され、PDAC細胞の増殖も抑制されることを見出し、(P)RRは膵管癌の腫瘍化メカニズムに関与していることが示唆された。本結果を学術誌に発表した(Scientific Reports 2015, 5:8854)。 2. レニン-アンジオテンシン系は炎症と深い関わりを持つことが知られている。一方、ヒトのリンパ球と単球はATⅡ受容体を発現している。ヒトの糸球体腎炎では、リンパ球、単球が重要な役割を果たしており、RAS系は炎症を強調していると考えられている。リンパ球及び単球での(P)RRの発現を、免疫染色法、Western Blot法、RT-PCR法、フローサイトメトリー法により調べ、(P)RRが炎症において作用を持つかを検討した。結果、(P)RR は単球に強く発現しており、ANCA-関連糸球体腎炎では糸球体近傍に浸潤したリンパ球及びマクロファージに発現していることを見出した。siRNA投与によりU937細胞系でのERK1/2の抑制が見られ、(P)RRはANCA-関連糸球体腎炎の炎症反応に関与していることが示唆された。本結果を学術誌に発表した(Am J Physiol Renal Physiol 2015,308:F487-F489)。 3. 腎臓での(P)RR発現をラットで検討した。結果、高食塩負荷にて腎臓での発現が亢進することを見出し、学術誌に発表した(Peptides 2015, 63:156-162)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織特異的ノックアウトマウスモデルを作成したところ、胎生致死であることが判明し、このモデルを用いた研究が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1. ELISAを用いた血中・尿中可溶性(P)RR濃度の測定:大迫研究の保存血液、尿検体を用いて可溶性(P)RR濃度を定量する。可溶性(P)RR濃度と、腎機能や血圧値、遺伝子多型など腎臓・心血管障害に関わる表現型や血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度といった他のレニン・アンジオテンシン系のマーカーとの関係につき、横断的な解析を行う。対象として約1,000名を予定している。 2. (P)RRが癌の発生と進展に関与していることが本研究のこれまでの結果で明らかになった。膵癌と乳癌での検討に加え、他の癌、特に腎細胞癌系において(P)RRと癌の発生・進展との関係を検討する。 3. (P)RR-/- ES細胞を用いた (P)RRの機能解析:(P)RR floxedマウスより(P)RRflox/flox ES細胞系を確立し、この細胞にアデノウィルス-Creを感染させ、(P)RR-/- ES細胞を作製する。このES細胞に可溶性(P)RR及び膜貫通型(P)RR、全長型(P)RR、それぞれのpcDNAを導入し、(P)RRの3形態の内の1つを発現するES細胞系を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の一部に達成の遅れが生じ、関連する消耗品の購入を抑制したため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にて、研究達成の遅れを取り戻す予定であり、購入を抑制していた関連する消耗品の購入に使用する。
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