研究課題
平成27年度は以下の点を明らかにした。1. ヒト血中には可溶型のProレニン受容体(sPRR)が存在する。sPRRは細胞内で全長型PRRとして合成されfurinにより切断されて血中に放出される。一方、脱水負荷はレニン・アルドステロン系を刺激することが知られている。そこで、ラットに脱水負荷をかけ、血中sPRR濃度レベルと、腎組織内PRR発現レベルの変化を検討した。結果、72Hrの脱水負荷により血中sPRRレベルは低下し,腎組織内全長型PRRの発現レベルは上昇していることを見出した。即ち、脱水負荷は全長型PRRの発現を亢進するが、血中への放出は低下させることが示唆された。(本研究はTohoku J of Exp Medに投稿し、revise中である。)2. PRRが癌の発生と進展に深く関与していることが昨年度までの本研究の結果で明らかとなっている。本年度は、乳癌の細胞増殖機構を更に検討し、インスリンによるPRRを介した増殖メカニズムが存在することを見出した。(第89回日本内分泌学会総会学術総会 2016年4月にて報告の予定。)3. 大迫研究の保存血液検体をELISAを用いて可溶性PRR濃度を定量した。結果、対象者350名において血中sPRR濃度は大脳皮質の表面積と負の相関を有することを見出した。sPRR濃度と、腎臓・心血管障害に関わる表現型や他のレニン・アンジオテンシン系のマーカーとの相関は認められず、PRRは脳の発達・萎縮退化に関与する因子であることが示唆された。(本研究結果は2016年ヨーロッパ高血圧学会での報告を予定している。)
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