研究課題/領域番号 |
25461210
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大瀬 貴元 東京大学, 医学部附属病院, 臨床登録医 (10568447)
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研究分担者 |
平田 喜裕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10529192)
稲城 玲子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (50232509)
南学 正臣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (90311620)
和田 健彦 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90447409)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 腸内細菌 / 尿毒素 / インドキシル硫酸 / インドール |
研究実績の概要 |
平成26年度は平成25年度中に進めていた慢性腎臓病モデルラットの1ヶ月での解析を進め、またその結果を受けて新たに尿毒素自身による腸管内の環境の変化について研究を進めた。 まずCKD惹起1ヶ月では、腸内細菌叢ではクロストリジウム群の一種で菌数の増加が認められ、また腸管粘膜の形態的な変化を認めた。さらにインドキシル硫酸の血清濃度の上昇とその前駆体のインドール濃度の腸管内での上昇を認め、軽度の腎機能障害でも血清尿毒素濃度の上昇と腸管内のインドール濃度上昇を認めることを明らかとした。また腸内細菌叢の変化を抑制する目的でガラクトオリゴ糖を投与したところクロストリジウム群の増加抑制が認められ、血中のインドキシル硫酸濃度も低下しており、ガラクトオリゴ糖による腸内環境と尿毒症状態の改善も認められることを明らかとし、論文として発表した。 続いて血中および腸管内尿毒素の上昇が軽度の腎機能障害の時点ですでに惹起されていたことから、腎不全における尿毒素の上昇はこれまでに考えられていたような腎機能低下による蓄積以外に、腸内細菌叢の変化による尿毒素の産生亢進や腸管粘膜障害による透過性亢進も寄与している可能性を疑った。 このため腎障害により上昇した尿毒素が腸管内にも分泌されることで腸内細菌叢の変化と腸管粘膜の障害を惹起するか評価を行うこととした。尿毒症による腸管粘膜の変化の評価方法を確立するため、これまでに光学顕微鏡的な形態評価に加え、免疫組織染色によるタイトジャンクション蛋白の評価をこれまでに作成した慢性腎臓病モデルラットの組織を用いて行っている。またこれらの評価方法により粘膜障害が起こるCKDラットの条件を確立した段階で、尿毒素の直接投与(経口及び腹腔内投与)で腸管粘膜障害の起こる条件を確立し、続けて粘膜のバリア機能の評価となる蛍光ラベルしたトレーサーの投与によるトレーサー実験を施行していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CKDにおける腸内環境の変化を、腸内細菌叢、尿毒素濃度など複数の視点で解析し、新規性のある内容を今回論文として発表できたことは意義深いと考えている。現在さらに発展させて尿毒素が腸管に及ぼす影響について検討を進めている。新たな実験系・評価方法も試しているため当初の予定よりは困難な点もあり、時間をかけて評価することが必要であるが、新たな視点による先駆性のある研究であることを意識しつつ困難にはフレキシブルに対応しつつ迅速に研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で強調している「腸腎連関」について、平成25年度の研究で示された「腎障害惹起で腸内環境が変化する」、という基本的な概念を平成26年度以降はさらに発展させ、粘膜の炎症、腸管上皮の緻密性の低下、尿毒素の上昇、腸内細菌叢の変化の関連について評価を深めるべく研究を継続していく予定としている。新たな評価方法なども可能な限り確立しつつ腎不全・尿毒症研究に新たな視点を提供できるようにしたい。 現在は尿毒症による腸管粘膜の障害の解析を進めており、粘膜障害の評価方法を確立した後に尿毒素による影響を評価していくこととしたい。
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