研究課題
本研究では急速進行性腎炎症候群(RPGN)の腎機能予後および生命予後を改善することを目的として,RPGNの再燃・再発を予測し,疾患活動性や長期予後を反映する臨床検査を確立することを目的としている.わが国では2002年にRPGNの診療指針が刊行されている.このため現在の診療指針に準じた治療を行った症例における再燃・再発に関連する因子を抽出するために,金沢大学附属病院および関連施設にて2002年以降にRPGNと診断した52例において検討した.観察期間中に12例(23%)が再燃した(観察期間の中央値 729日).再燃に関連する因子をCox比例ハザードモデルにて検討したところ,臨床所見では寛解時の臓器障害の程度を反映するVasculitis damage index (VDI)値,診断時の腎病理所見では細胞性半月体形成率が抽出された.さらにこれらの因子で解析を行ったところ,VDI値が最も再燃に関連する因子として抽出された.しかしVDIの各項目における解析では,再燃に関連する因子は抽出されなかった.また再燃した症例では感染症の併発率が高く,感染症の併発が腎機能予後および生命予後に関連していた.このため感染症併発に関連する因子をCox比例ハザードモデルにて検討したところ,診断時の疾患活動性を反映するRPGNの臨床重症度,治療開始時の血清クレアチニン値とIgG値,および寛解導入療法の際のシクロフォスファミドの使用が抽出された.さらにこれらの因子にて解析を行ったところ,RPGNの臨床重症度が感染症の併発に最も関連する因子として抽出された.以上の結果から,わが国のRPGN診療指針が刊行された2002年以降に発症したRPGN例において,寛解時の臓器障害の程度が再燃に関連することが示された.また診断時の疾患活動性がその後の感染症併発に関連することが示された.
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Clin Exp Nephrol.
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