研究課題
この研究では、現在進行中の慢性腎臓病(CKD)患者における慢性炎症と動脈硬化性疾患、感染症、予後を検討する前向きコホート研究NISE study (Nagoya Immunity System in the End-stage renal disease study)の参加者から静脈血を採取し、1)リンパ球を分離 2)Flow cytometry法にてリンパ球の機能解析、リンパ球分画の単離 3)DNAメチル化の解析 4)血清中の炎症性マーカーの定量し、CKD患者の死亡率上昇のメカニズムを探ることを目的としている。現在、登録患者数を追加するとともに、末梢血よりリンパ球分離し、凍結保存を進めている。今期の実績としては、炎症性サイトカインIL-6の測定、リンパ球分離の基礎的データ解析も含め、末梢血白血球象をもとにNISE studyデータベースに入力し、臨床情報と比較検討し、報告を行った。腫瘍学や循環器分野で、末梢血好中球/リンパ球比(neutrophil/lymphocyte ratio :N/L比)は、好中球数の増加は炎症を、リンパ球数の低下はストレスや栄養不良を反映し、N/L比の上昇は予後危険因子であることが報告されている。そこで、NISE study に登録されたCKD患者について、N/L比を検討したところ、N/L比の上昇は、透析導入後の心血管イベントの早期発症、発症頻度の増加に関与し、心血管イベントの危険因子であることが示された。心血管合併症などの予後予測因子として世界的に最も広く研究されている炎症マーカーはCRPである。今回の研究では、透析導入時のIL-6、CRPの上昇は心血管イベントに関与せず、N/L比の上昇のみが年齢、性別、糖尿病で補正しても心血管イベントに対する相対危険度の上昇に関与していた。本年度は炎症惹起のメカニズムの解明までは達成できなかったものの、リンパ球などの免疫担当細胞のアンバランスが、CKD患者における死亡率の上昇に関与していると検証された。
4: 遅れている
本年度は、A) CKD患者の臨床症状のデータベース、B) 免疫担当細胞(リンパ球)の採取、解析、C)DNAメチル化の解析、D) 血清中の炎症性マーカーの測定をすることになっている。このうち、A)D)については、新規登録患者約20名と血清の回収など予定通り進んでいる。しかし、B)の免疫担当細胞の採取、解析に進めていない。リンパ球分離をするためには、静脈採血を行ってから速やかに分離作業に入る必要があるが、共同研究施設の体制等により条件をみたす施設が限られてくる。また、おそらく、CKD患者特有の慢性炎症状態に関与していると思われるが、当初の予定より分離されるリンパ球数が少なく、繰り返しの採血が必要になる症例などが発生している。
H27度も、A) CKD患者の臨床症状のデータベース、B) 免疫担当細胞(リンパ球)の採取、解析、C)DNAメチル化の解析、D) 血清中の炎症性マーカーの測定を進めていく。H27度度は、登録施設の見直しを含めた体制の再確認を行い、B)C)を行える登録患者(リンパ球分離)を増やしていく。H26年度に行ったような、CKD患者における免疫担当細胞の異常についても検討し、効率よくリンパ球分離ができる方法についても検討していく。
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