研究課題/領域番号 |
25461215
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坪井 直毅 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (50566958)
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研究分担者 |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362253)
秋山 真一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (20500010)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マクロファージ / 炎症 / 糸球体腎炎 / 免疫調整 |
研究概要 |
腎障害進展過程において、M2型Mφはその存在組織、部位の微小環境により様々なサブタイプに分化すると考えられる。平成25年度は進行性腎疾患におけるM2型Mφの重要性を明らかにする第一段階として、ヒト腎生検組織を用い、M2型Mφのサブタイプ別局在を免疫組織学的に詳細に検討した。2008年から2012年までに名古屋大学および関連施設にて腎生検を施行したループス腎炎(LN)74症例の腎生検検体、尿、血液検体を使用した。同様にIgA腎症(IgAN)、ANCA関連血管炎(ANCA)、微小変化型ネフローゼ(MCNS)、膜性腎症(MN)、糖尿病性腎症(DMN)の検体を比較するために用意した。腎組織はマクローファージマーカー(CD68)、M2マーカー(CD163、CD204)で免疫染色した。正常腎組織およびMCNSでは、糸球体中にCD163陽性細胞はわずかしか見られなかったが、MNやIgANでは細胞増殖に応じて増加していた。DMNでは初期段階のメサンギウム基質増加を呈する糸球体と、病状が進行し無細胞性の基質が増加した糸球体では所見が異なり、ばらつきが大きかった。ANCAでは半月体のない糸球体では正常に近い所見であり、半月体形成糸球体では陽性細胞が増加していた。ループス腎炎では、活動性強く細胞増殖の強いclassIVの糸球体でCD163陽性細胞の増加が顕著であり、細胞増殖の乏しいclassVでは陽性細胞はわずかであった(Figure 1)。各疾患を比較すると、活動性の高いLNでは有意にCD163陽性細胞が増加していた。一方、腎尿細管間質においては、疾患に関わらず腎機能が低下し腎尿細管間質の細胞浸潤と線維化が進んだ症例にてCD163陽性細胞の増加が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 進行性腎障害におけるM2型Mφの局在および集積時期の詳細検討:進行性腎障害動物モデルやヒト腎生検サンプルを用い、疾患および進展時期によるM2型Mφのサブタイプ別局在を組織学的に明らかとすることを目標とした。H25年度は当研究室で保管しているヒト腎生検組織検体を用いてCD163陽性マクロファージの糸球体および間質での集積が証明された。同細胞集積は炎症性白血球がその進展に大きく関与する活動性腎炎において顕著であった。しかしながらMCNS、MNなど非活動性腎症については集積が見られず、CD163陽性マクロファージは腎炎の進展あるいは収束に関与している可能性が示唆された。 (2) M2型Mφ投与による腎障害改善効果の検討:マウス脾臓MφからIL-4+IL-13刺激によるM2型 Mφを誘導を試みたが、細胞治療に用いる細胞数が得られなかったため、骨髄細胞に同様の刺激を行い、CD206、CD163陽性マクロファージの誘導系の確立を試みている。 (3) CD163陽性M2型Mφ特異的に除去するトランスジェニックマウス作製と腎障害における機能解析:マウス抗GBM抗体型腎炎腎組織においてCD163陽性細胞の同定を試みたが、有意な染色所見が得られなかったため、同マウス作成計画は延期することとした。 (4) CD206陽性M2型Mφの腎障害における機能解析:マウス抗GBM抗体型腎炎腎組織においてCD206陽性細胞集積を確認したが、同時にマクロファージ以外の糸球体構成細胞の一部に陽性所見が確認された。正常マウスにジフテリアトキシンを投与した際に蛋白尿の出現をみたため、同マウスに適した動物実験モデルを思案中である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 進行性腎障害におけるM2型Mφの局在および集積時期の詳細検討:CD163に加え、全マクロファージマーカーとしてCD68、M2マーカーとしてCD204を選び、LN組織にてその発現を検討。各マクロファージの腎集積度とループス腎炎組織学的活動性との関連を検討する。また血中および尿中可溶性CD163濃度をELISA法で測定し、腎組織所見やCD163陽性M2マクロファージ集積f度、蛋白尿などとの関連を調べ、ループス腎炎の活動性指標としての有用性を検討する。 (2) M2型Mφ投与による腎障害改善効果の検討:骨髄由来CD206、CD163陽性マクロファージの培養系を確立し、マウス抗GBM抗体型腎炎への治療実験を試みる。 (3) CD163陽性M2型Mφ特異的に除去するトランスジェニックマウス作製と腎障害における機能解析:引き続きCD163陽性マクロファージの腎臓内発現を別抗体にて検討する。 (4) CD206陽性M2型Mφの腎障害における機能解析:マウス抗GBM抗体型腎炎のモデルについては骨髄移植により糸球体構成細胞によるCD206陽性細胞を除外できる系を考慮している。またプリスタン誘導LNモデルや糸球体以外に障害を与える腎虚血再環流モデルを用いることも計画中である。
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