研究課題
近年マクロファージ(Mφ)には、急性期炎症を担うclassically activated macrophage(M1)と炎症を鎮静化させ組織修復を担うalternative activated macrophage(M2)が存在することが示されている。腎疾患では、明らかな免疫応答による腎炎の場合はもちろん、慢性腎臓病(CKD)全般でも腎組織へのMφ浸潤が認められ、マクロファージは腎炎やCKDの発症とその進展に大きな役割を果たしていると考えられてきた。本研究の目的は進行性腎障害進展過程におけるM2型Mφのサブタイプ別組織局在・機能を解析し、人為的に誘導したM2Mφの動物モデルへの移入による腎障害改善効果を明らかにすることである。H27年度は各進行性腎障害患者の尿、血清検体中の可溶性CD163(sCD163)排泄の計測を行った。尿中sCD163排泄は特にループス腎炎(LN)において高値を示し、かつ74名LN患者の糸球体CD163陽性Mφ数、病理学的疾患活動性と正の相関を示した。加えて、活動性LNを検定するバイオマーカーとしてを尿中MCP-1と比較したところ、sCD163はMCP-1よりAUC値において優位であった。すなわち尿中sCD163はLNにおけるバイオマーカーとなり得る可能性が示唆された。また人為的に誘導したマウス骨髄由来CD206陽性M2Mφ投与は、マウス抗基底膜抗体型腎炎モデルにおいて治療効果を示した。またIn vitro共培養系の実験では、CD206陽性マクロファージが近接する炎症性M1Mφ、ナイーブT細胞をそれぞれM2形質、免疫制御性T細胞(Treg)へ誘導することが示された。とりわけ後者に関しては、脾臓内Treg増加がCD206陽性M2Mφ投与マウス群で確認されており、CD206陽性M2Mφ投与による腎炎治療効果のメカニズムの一端が解明できた。
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Nephrology Dialysis Transplantation
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