研究課題
申請者らは脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)に着目し、独自に低血清培養法を開発した。この低血清培養脂肪由来間葉系幹細胞(LASC)は従来の高血清培養したASC(HASC)や骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)に比べて再生能・免疫抑制能に優れていることを見出し、報告してきた。LASCの具体的な効力として、腎疾患領域に関しては腎再生に関わる重要因子として肝細胞増殖因子(HGF)分泌能が高いこと、免疫抑制作用としてT-cell増殖抑制能が高いこと、炎症性M1マクロファージを抑制し、抗炎症性M2マクロファージに誘導する能力が高いことをHASCやBM-MSCと比較して示してきた。しかしながらこれらの作用の分子的メカニズムについては依然明らかにされていない点が多い。HASCとLASCの細胞性質は、樹立工程から見て血清濃度によるものであると推測される。そこで、低血清(飢餓状態)において亢進すると考えられるオートファジー系からメカニズムの解明を試みたが、LASCのオートファジー亢進と免疫抑制能との関連を示すことはできなかった。そこで本年は代謝経路、解糖系に着目し、細胞の活性・バイオプロセスの面からのアプローチを試みた。幹細胞ではエネルギー産生を抑えることで幹細胞性を維持しているとの報告があるが、ミトコンドリア活性を検討するために細胞培養上清中に分泌される乳酸/ピルビン酸比(L/P比)を見てもHASC/LASC間において有意な差は認められず、細胞当たりのグルコース消費量や乳酸産生量に関しても差を示すことはできなかった。細胞内の代謝産物に関しても網羅的な解析を実施したが、これまでのところエネルギー代謝経路に関わる明らかな差は認めていない。今後低血清培養の作用についてはさらなる検討を要する。
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