研究課題/領域番号 |
25461217
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
尾崎 武徳 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (10452195)
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研究分担者 |
平山 明由 慶應義塾大学, 政策・メディア研究所, 特任助教 (00572405)
丸山 彰一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10362253)
秋山 真一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20500010)
松尾 清一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190410)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メタボローム / キャピラリー電気泳動 / 診断マーカー |
研究実績の概要 |
オミクス解析法の一つであるメタボローム解析は生体試料中の全代謝物(メタボローム)の変化を一斉測定する網羅的解析手法である。本研究分担者は世界で初めてキャピラリー電気泳動装置+質量分析機(CE+MS)を用いて細胞内の全イオン性代謝物(~1k Da)を網羅的かつ高速に直接定量する手法を開発し(Soga et al.,2003)、薬剤性急性肝炎の新規バイオマーカーの発見(Soga et al.JBC,2006)など良好な結果を得ている。腎疾患においてはメタボローム解析手法を用いた研究の報告はまだほとんどなく、本研究のような1,700例という大規模な臨床検体を用いた研究は世界でも初めての試みと思われる。 現在、腎疾患の診断手法である腎生検は出血のリスクが高く、高齢者、片腎の患者などには施行ができないため診断や病態の把握が困難となり、十分な治療ができないことも多い。腎生検を行わずに血液と尿から腎疾患の診断ができる新たな診断方法の開発は臨床的価値が非常に高いと思われる。 予備研究としてすでに約200例の臨床検体(尿検体)のメタボローム解析し、疾患により代謝の異なる物質が明らかとなっている。疾患特異的な代謝物を組み合わせることで識別診断ができる可能性があることに着目し、検体数を大幅に増やし、制度の高い診断マーカーの開発を目指している。現時点ではネフローゼ症候群、IgA腎症に着目して解析を進めている。 また、尿中、血中の代謝物濃度はGFRによって変動することが予想される。これまでeGFRと尿中、血中代謝物濃度との関連の検討は報告されているが、GFR測定のgold standardであるイヌリンクリアランス(実測GFR)との関連の検討の報告は無く、これについても検体を収集し解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在約1000例の検体が収集でき、解析を行った。解析の一例として、収集された症例の中からネフローゼ症候群のみを抽出し、かつ原因となった疾患上位7傑(微小変化型ネフローゼ症候群[MCNS]、膜性腎症{MN}、糖尿病性腎症{DN}、巣状分節性糸球体硬化症{FSGS}、アミロイド腎症{RA}、ループス腎炎{LN}、IgA腎症{IgA})233例において、他疾患と鑑別する代謝物の探索を行った。 その結果、単一の代謝物で疾患を鑑別する代謝物として、MCNS:代謝物A・AUC=0.718、MN:代謝物B・AUC=0.712、DN:代謝物C・AUC0.954、FSGS:代謝物D・AUC=0.744、RA:代謝物E・AUC=0.715、SLE:代謝物F・AUC=0.897、IgA:代謝物G・AUC=0.755が候補となった。複数の代謝物を多重ロジスティック回帰モデルに投入してROC曲線を描くと、更にAUCが改善するモデルを作製することもできた。 またIgA腎症の検体241例を用いて、Oxford分類による間質線維化スコア(T0~2)を予測する代謝物を同定することも試みている。スコアの上昇に伴い有意差をもって上昇/低下する代謝物が複数同定されたが、eGFRとの相関が強く、スコアの予測の予測能としてはeGFR以上には有用でない可能性が示唆された。 本研究ではすでに非常に多数の検体を用いて大規模に解析することを目的としているので、検体の収集に予想以上に時間を要している。しかし、すでに約800例の検体は収集できており、大きな遅れではない。
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今後の研究の推進方策 |
ネフローゼ7疾患を鑑別する代謝物を探索する試みから得られた結果のvalidationのために、新たにネフローゼ症候群7疾患の検体185例を既に収集した。現在これらのメタボローム解析を行っている。 IgA腎症に関しては、更に同一症例群の血漿中のメタボローム解析も追加し血液、尿の代謝物プロファイルの比較を行うことで、より生体内生理に基づいたバイオマーカーの探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体収集に時間を要したため、当該年度に予定していた検体輸送料ならびに試薬測定にかかる費用を来年度の研究遂行に充当する。
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次年度使用額の使用計画 |
大幅な研究の遅れは生じていない。繰越金は次年度収集の検体解析にかかる費用として使用する。
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