研究課題/領域番号 |
25461221
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松原 雄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90422964)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 |
研究実績の概要 |
糖尿病性腎症の病理像は糸球体硬化であり、分子生物学的には糸球体におけるIV型コラーゲンα1/α2鎖(Col4a1/a2)の増加を特徴とする。我々は、Col4a1/a2の転写制御因子として新たにSmad1を同定した。そこで、本研究では、糖尿病性腎症におけるSmad1の役割をin vivoで詳細に検討する。 初年度は1) Smad1強発現糖尿病マウスで腎病変が増悪すること、また、2) Smad1を活性化する上流分子としてBone morphogenetic protein 4 (BMP4)が重要であることを示した。次年度では3) Smad1ヘテロ欠損糖尿病マウスで腎病変が抑制されること、および、4) BMP4に対する中和抗体を糖尿病モデルマウスに投与し腎病変が抑制されることを示した。以上、初年度に明らかにした1), 2)と今年度の成果3), 4)を合わせて、現在論文を投稿している。 また、胎生致死であるSmad1ホモ欠損マウスの解析を可能にするため、初年度は、タモキシフェン誘導Smad1ホモ欠損マウスを確立し、腎炎を誘導した。Smad1欠損マウスでは実験腎炎も抑制される結果が得られ、この結果も論文投稿中である。同マウスに対して、次年度は、糖尿病を惹起して腎病変を解析中であるが、実験腎炎のような短期観察とは異なり、長期観察では同マウスの死亡率が野生型に比べて高いことが明らかになりつつある。現在、腎表現型を含め、慎重に死因を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、概ね順調に進展している。「Smad1の強発現マウスでの腎障害悪化」、「Smad1ヘテロ欠損マウスでの腎障害抑制」、「BMP4中和抗体による糖尿病性腎症治療効果」という一連の研究成果を完了させ論文を投稿できたことは評価に値する。タモキシフェン誘導Smad1ホモ欠損マウスの実験腎炎モデルも確立し論文投稿していることも進行が順調であることを示唆する。ただし、同マウスの長期生存が予想より悪く、Smad1ホモ欠損糖尿病マウスの長期観察にあたって匹数の確保がやや困難な状態になっていることから、「概ね順調に進展している」と結論した。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿中の論文の完成とSmad1のホモ欠損マウスの観察に重点をおく。現在の問題は、糖尿病Smad1ホモ欠損マウスの長期生存率が著しく低いことである。前実験では、非糖尿病であっても、Smad1ホモ欠損マウスに腎表現型が観察されている。したがって、このまま長期生存の匹数確保が難しいと判断された場合には、やや短期観察(前実験では8ヶ月の観察が必要であると見積もっていたが、6ヶ月に短縮)の時点で腎病変を検討したり、糖尿病の惹起を中断して、非糖尿病状態でのSmad1ホモ欠損マウスを増やすことで、同マウスの観察匹数の確保を計画している。BMP4中和抗体の治療薬への応用については、引き続き2型糖尿病マウスへの応用としてdb/dbマウスへの投与を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
タモキシフェン誘導Smad1ホモ欠損マウスの作成において、十分な匹数を確保できず、結果として観察に要する費用が次年度使用額に計上されることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度にあたってはSmad1ホモ欠損マウス確保のために、1) 観察期間を短縮(8ヶ月→6ヶ月)とする 2)糖尿病を惹起せず、「非糖尿病Smad1ホモ欠損マウス」を確保することで、観察必要な匹数を確保する。また、BMP4中和抗体を2型糖尿病に投与する研究を併行して行う。
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