研究課題
糖尿病性腎症の病理学的特徴は糸球体メサンギウム領域の細胞外基質増加であり、その増加を制御することが糖尿病性腎症の治療につながると考えられる。細胞外基質を構成する主たる成分はIV型コラーゲンα1/α2(Col4a1/a2)であるが、その制御機構はながらく不明であった。近年、我々は糖尿病環境下におけるCol4a1/a2のin vitroでの直接制御因子としてSmad1を同定した。本年度では、この新規制御因子Smad1がin vivoでも糖尿病性腎症進展に重要な役割を果たすことを示した。最初に、Smad1強発現マウス(Smad1-Tg)を確立し、ストレプトゾトシンを用いて糖尿病を惹起した。その結果、対照マウスと比較して、Smad-Tgでは著しいメサンギウム基質増加とSmad1のリン酸化増加を認めた。次に、Smad1リン酸化の制御因子を探索した結果、骨形成因子4(BMP4)とその受容体が糖尿病で増加していることを示した。そこで、BMP4中和抗体を作成し、糖尿病を惹起したSmad1-Tgマウスと野生型マウスをBMP4中和抗体で治療した結果、Smad1のリン酸化が減少し、メサンギウム基質拡大も著明に減少することを証明した。さらに、Smad1のヘテロ欠損マウスでは糖尿病惹起後にメサンギウム基質拡大が抑制されることも証明した。即ち、1) Smad1はin vivoでも糖尿病性腎症のメサンギウム基質増加の進展に重要であること、2) Smad1の制御因子としてそのリン酸化を制御するBMP4が重要であること、また、3) BMP4/Smad1シグナルの抑制は糖尿病性腎症の新たな治療戦略になることが示唆された。これらの結果は論文として公表された(Diabetes. 2015年8月発行 第64巻(第8号): 2978-2990頁)
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Diabetes
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