研究課題
基盤研究(C)
本研究は,ポドサイトや尿細管上皮細胞の形質変異に対する可溶型α-Klotho蛋白の病理生理学的意義を解明し,糸球体硬化や腎間質線維化の発症・進展に対する新たな治療法の解明を目指した基礎的知見を集積することを目的に展開した.①ヒト糸球体腎炎例での腎臓の膜型α-Klotho蛋白および血中分泌型α-Klotho蛋白と腎糸球体FSP1陽性ポドサイト数および間質内FSP1陽性細胞数との関係[対象]当施設および関連施設で腎生検を施行しえた慢性腎臓病(CKD)例120例を対象とした. [結果] CKD例では,eGFR低下に伴い,有意に腎臓での膜型α-Klotho発現量および血中分泌型α-Klotho濃度は低下,間質内FSP1陽性細胞数は有意に上昇した.また,腎糸球体硬化率の増加に伴いFSP1陽性ポドサイト数は増加した.腎臓の膜型α-Klotho発現量と間質内FSP1陽性細胞数は有意な負の相関関係を示したが,血中分泌型α-Klotho濃度とは負の相関関係を示す傾向にあったが,有意なものではなかった.また,腎生検連続切片を用いた免疫染色法では,膜型α-Klotho発現の低下した尿細管上皮細胞の周辺にFSP1陽性細胞が多く存在する傾向にあり,尿細管上皮より分泌されたα-Klotho蛋白がparacrine的に作用し,腎間質のFSP1陽性細胞の出現に関与している可能性が示唆された.また,FSP1陽性ポドサイト数と血中分泌型α-Klotho濃度には,負の相関関係を示す傾向であったが,有意なものではなかった.今後,対象症例数をさらに増やして検討する必要がある.②糸球体腎炎モデルマウスでの腎臓の膜型α-Klotho蛋白および血中・尿中分泌型α-Klotho蛋白と腎糸球体FSP1陽性ポドサイト数および間質内FSP1陽性細胞数との関係現在各種実験腎炎モデルマウスを作成,検討中である.
2: おおむね順調に進展している
腎生検を施行しえたCKD症例で,本研究に同意,対象となった症例が予測通りの症例数で,十分な検討を行えたと考える.また,実験腎炎モデルとしてAdriamycin(ADR)腎症およびループス腎炎モデルマウスであるMRL/lprマウス,MRL/lprマウスより樹立したモノクローナル抗体惹起型ループス腎炎マウスの作成が順調に進行し,解析が十分行える状況である.
ヒト対象例数をさらに増やし,詳細な検討を行う.また,各種実験腎炎モデルでの腎病変標本が順次作製中であり,さらに解析を予定通り進めていく.また,α-Klotho遺伝子Hetero-typeマウス(KL+/-)をBalb/cマウスおよびSCIDマウスにBackcross交配を現在行っているが,おおよそ8代Backcross交配をおこない,それぞれAdriamycin(ADR)腎症と管内増殖型腎炎LNを誘導,経時的に腎病変の発症・進展を病理組織学的に,腎糸球体FSP1陽性ポドサイト数および間質内FSP1陽性細胞数を解析する予定である
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