研究課題
今年度は,ループス腎炎(LN)モデルマウスMRL/lprマウスより樹立した腎炎原性抗体による実験糸球体腎炎の発症・進展に対する腎臓の膜型α-Klotho(KL)蛋白の意義につき検討を行った.【方法】α-Klotho遺伝子Hetero-typeマウス(klotho+/-)をSCIDマウスにBackcross交配(10代)行い,SCID klotho+/-(KL+/-)マウスおよびSCID klotho+/+(KL+/+)を作成した.SCID klotho-/-マウスの作成を試みたが作成できなかった.そこで2種類のマウスにLNモデルマウスMRL/lprより樹立した腎炎原性抗体産生ハイブリドーマを腹腔内投与し,管内増殖型腎炎LNを誘導し,経時的に腎病変の発症・進展を病理組織学的に,腎糸球体FSP1陽性ポドサイト数および間質内FSP1陽性細胞数を解析した.【結果】SCID KL+/-(n=8)はSCID KL+/+(n=8)に比べ腎臓における膜型KL mRNA発現が半量程度であることを確認した.SCID KL+/-およびSCIDKL+/+のいずれも,管内増殖病変の進行に伴いFSP1陽性ポドサイト数は有意に増加した.また,糸球体内CD68陽性細胞数とFSP1陽性ポドサイト数は有意な正の相関関係を示した.しかし,SCID KL+/-とSCID KL+/+で管内増殖病変の進行度やFSP1陽性ポドサイト数に有意な差は認められなかった.一方,間質の線維化は惹起されず,また間質内FSP1陽性細胞はほとんど同定できなかった.以上のことから,ループス腎炎原性抗体により惹起される実験LNの発症・進展に,腎臓での膜型KL発現量は有意な影響を及ぼさず,また糸球体内への炎症細胞浸潤やFSP1陽性ポドサイトの誘導に対しても有意な影響を及ぼさなかった.実験LNの発症・進展に腎臓局所の膜型KL発現量は有意な影響を及ぼさない可能性が示唆された.ただ SCID klotho-/-マウスが作成できなかったため,今回の実験LNにおける腎臓局所での膜型KL発現の意義の解明が未解決である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
PLoS One
巻: 10 ページ: e0132539
10.1371/journal.pone.0132539