研究課題/領域番号 |
25461227
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
長田 太助 自治医科大学, 医学部, 教授 (40393194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腎間質線維化 / 腎尿細管 / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
本研究の基礎となった平成22-24年の基盤研究(C)から検討を引き継ぎ、血管におけるAMPキナーゼ(AMPK)の新しい側面を昨年報告した(Myojo M, Nagata D. PLOS ONE 2014 )。本研究においては、腎臓間質線維化が起きる時の腎尿細管におけるAMPKの役割について検討している。低酸素状態や様々なサイトカインに暴露された腎尿細管細胞ではアポトーシスと共にオートファジーも観察され、それが尿細管細胞の保持や間質線維化に何らかの寄与をしていると予想される。AMPKがオートファジーやアポトーシスを制御することを以前我々は報告したが(Nagata D. Hypertens Res 32:133;2009)、前回の基盤研究から今回の研究にかけて、AMPKの優性阻害体dominant negative (dn)と恒常活性化体constitutively active (ca)を尿細管特異的発現しうる遺伝子改変マウスを開発した。これらの遺伝子改変マウスを使い、片側尿管結紮の後、腎臓で発現が増加する遺伝子profileを解析するとともに、尿細管におけるオートファジーとアポトーシスの程度を評価し、腎間質線維化におけるAMPKの役割を解明しようとしている。尿管結紮後5日目では対照と比べdnでは間質線維化が増強し、caではやや減弱していたが、8日目ではどの群でも間質線維化の程度が高度で有意な差を検出できなかった。このようなプレリミナリーな結果が得られたので、現在結紮後4~6日で線維化の程度の差が最大のタイミングで、アポトーシスの評価のためのTUNEL染色やウエスタンブロット法でPARP cleavageの定量を実施する準備中である。またオートファジーの評価のため、ウエスタンブロット法でLC3とBeclin1の量を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本基盤研究(C)の研究代表者の長田は課題が採択当時、獨協医科大学循環器・腎臓内科の准教授であった。しかし課題採択後、約半年で自治医科大学の教授で異動したことにより、さまざまな想定外の理由により研究進行に遅れが生じている。具体的な理由は主に以下の3点である。1)自治医科大学において改めて新規扱いの遺伝子改変動物を扱った動物実験を開始する際に、研究倫理を含めて様々な手続き・審査が必要であり、それに時間をかなり要したため、獨協医科大学で中断せざるを得なかった実験がなかなか再開できなかった。2)遺伝子改変動物を自治医科大学に移動する必要があったが、書類審査や自治医科大学内の動物施設の空きスペースの確保、および検疫等で時間を要してしまいった。さらに動物が老齢化して繁殖可能期間を過ぎて、必要な実験動物の匹数を揃えることが不可能となってしまった。それゆえ獨協医科大学で精子を採取し、自治医科大学で人工授精により動物をまた揃える必要が出てきた。現在、人工授精の手続きを完了し、受精準備中である。3)自治医科大学では長田が腎臓内科教授・診療科長であるとともに内科学講座全体の主任教授と附属病院副病院長を兼任せざるを得なくなったため教育業務、管理業務、臨床業務がさらに増加しつつある。それゆえ業務を円滑に実施しながら、研究補助員の増員をはかり、本研究を再開するのに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度には本研究が遅延している主な理由がほぼ解消されると予想していたが、その予想を上回るような事態も生じて、研究の遅延が挽回できないでいるが、2015年1月から新たに獨協医科大学で本研究課題を含めて長田の研究を補助していた研究補助員を1人、自治医科大学で雇用した。さらに4月からは腎臓内科所属の大学院生が2名増えたので、実際の実験業務の補佐が可能な人材の充足ができたと考える。その増員した研究補助員や大学院生を最大限動員して研究を粛々と推進するように努力したい。遺伝子改変動物が繁殖可能で匹数が揃えられた時期に行った実験サンプルの解析がまだ十分実施できていないので、その解析から本格的なデータ収集再開を始めたい。また可及的に早く、人工授精によって実験動物の数を自治医科大学で復元することにより、当初の予定通りTUNEL染色やPARP cleavageやLC3とBeclin1の定量を実施していく予定である。その一方で大学や附属病院の管理業務、診療業務を効率化し、研究業務に割ける時間を最大化できるよう、さらに努力していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主任研究者の長田の施設間異動のため、研究計画に遅れを生じ、消耗品の購入等も遅延したが、平成26年度中にかなり予定通りの進捗速度に近づいてきている。平成25年度の未使用額が70万円を超えていたが、平成26年度では3万円程度にまで圧縮されており、今年度はほぼ予定通りの支出ペースになると考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に実施予定の研究において、実験動物の飼料代・TUNEL染色やウエスタンブロットの際の試薬代の一部として使用する予定である。
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