研究実績の概要 |
本研究においては、腎臓間質線維化が起きる時の腎尿細管および血管内皮細胞におけるAMPキナーゼの役割について検討した。低酸素状態や様々なサイトカインに暴露された腎尿細管細胞ではアポトーシスと共にオートファジーも観察され、それが尿細管細胞の保持や間質線維化に何らかの寄与をしていると予想される。AMPキナーゼ(AMPK)がオートファジーやアポトーシスを制御することを以前我々は報告したが、前回の基盤研究から今回の研究にかけて、AMPキナーゼの優性阻害体dominant negative (dn)と恒常活性化体constitutively active (ca)を尿細管特異的、もしくは血管内皮細胞特異的にドキシサイクリン依存的に誘導しうる遺伝子改変マウスを開発した。しかし研究代表者の長田が獨協医科大学循環器・腎臓内科の准教授から自治医科大学の教授で異動し自治医科大学において改変動物を人工授精でSPF化するステップにも時間を要した。獨協医科大学において実施した予備実験では、尿細管特異的に遺伝子を誘導してから尿管結紮後5日目では対照と比べ、dnでは間質線維化が増強し、caではやや減弱していたが、8日目ではどの群でも間質線維化の程度が高度で有意な差を検出できなかった。このようなプレリミナリーな結果が得られたので、自治医科大学で更に違うタイミングでTUNEL染色やウエスタンブロット法でPARP cleavageの定量を実施する予定であった。しかし、尿細管特異的にdn, caを、血管内皮細胞特異的にcaをドキシサイクリンで誘導できていないことが確認された。現在、血管内皮特異的にdnを誘導できるかどうか確認中である。したがって当初の予定が大幅に遅れており、もし今後ドキシサイクリン血管内皮特異的にdnを誘導できることが確認されれば、この系において当初の予定通りの検討を今後も進めていく予定である。
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