我が国では、毎年3万人の慢性腎臓病(Chronic kidney disease:CKD)患者が末期腎不全に至って透析導入されており、CKDの進行抑制法の開発は急務である。腎線維化は原因疾患を問わず、CKDが末期腎不全への過程でたどる最終共通路であり、理想的な治療標的と考えられる。我々は10年以上に渡ってTGF-1の線維化促進作用を中継するmatricellular蛋白であるCCN2が、腎線維化に重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。CCN2は4つのモジュールから構成されており、最近、我々は腎線維化における第4モジュールの重要性を支持するデータを得たため、第4モジュールを欠損した変異型CCN2発現マウスを作成したところ、予備実験において有意な腎線維化抑制効果が確認された。本研究ではこの変異型CCN2発現マウスを用いて、よりヒトCKDに近い病態における腎線維化抑制効果を検討する。本年度は昨年度に引き続き、水腎症モデルマウスにおけるインテグリンを介したPI3K-Akt-GSK3b経路の活性化を抑制する第4モジュールを標的としたデコイペプチドを設計し、in vivoにおける線維化抑制効果を検討した。その結果、既報のインテグリン結合部位とは異なる部位に対応するデコイペプチドによりCCN2を介した線維化抑制効果が認められた。さらに野生型および変異型CCN2発現マウスにおいて水腎症作成24時間後の腎臓組織蛋白を抽出し、プロテインアレイを用いた網羅的な蛋白レベルの変化を検討したところ、CCN2による線維化促進作用の新たな細胞内情報経路の候補が検出された。また変異型CCN2発現マウスを用いた5/6腎摘モデルの作成を継続し、有意に線維化が抑制されることを確認した。
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