研究課題/領域番号 |
25461230
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸茂 丈史 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任講師 (70265817)
|
研究分担者 |
河原崎 和歌子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (50424594)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 糖尿病性腎症 / エピジェネティクス / DNAメチル化 / 近位尿細管 |
研究概要 |
透析導入原疾患の第一位を占める糖尿病性腎症は大きな医学的・社会的負担となっており、新規治療法の開発は喫緊の問題である。糖尿病性腎症は進行性であるものの、集学的治療で回復しうることが報告されており、進行性を形成させる原因をつきとめることができれば新たな治療法の開発につながる。最近、慢性炎症や線維化を主体とする進行性の病態は、細胞の形質変化を持続させるエピジェネティック異常が原因となって生じることが明らかになってきた。糖尿病性腎症の回復への鍵もエピジェネティクス異常にあると考えられる。 平成24年度までの基盤C研究「エピジェネティック異常を標的とした新規慢性腎臓病治療法の開発」によって、糖尿病性腎症モデルのdb/dbマウスの腎臓では、nox4遺伝子にDNAメチル化異常が生じていることを見出した。しかし、DNAメチル化プロフィールは組織間や組織構成細胞毎に全く異なるため、本研究では、糸球体分画、近位尿細管細胞を分取し、分画ごとに糖尿病で生じるDNAメチル化異常を明らかにすることとした。本年度は、近位尿細管細胞の解析に着手した。 平成24年度までの検討で開発したソーターを用いる方法で近位尿細管細胞を分取した。まず正常マウス近位尿細管細胞のDNAメチル化状態を非尿細管細胞と比較することにより近位尿細管細胞特異的なメチル化状態を検討したところ、転写因子、糖脂質代謝酵素、刷子縁酵素などで脱メチル化して遺伝子が明らかになった。これらの遺伝子はDNAメチル化レベルで近位尿細管細胞での発現が厳密にコントロールされていると考えられた。本年度に得られた近位尿細管DNAメチル化状態の情報を用いて次年度以降に糖尿病特異的変化を糖尿病モデルマウスと比較検討することにより解明していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常マウスの近位尿細管細胞を分取を、ソーターを用いる方法によって着実にすすめることができた。これをもちいてゲノムワイドに解析をすることによりDNAメチル化情報を獲得した。さらに非近位尿細管細胞との比較により近位特異的DNAメチル化状態を把握することができた。これまでに近位尿細管細胞のDNAメチル化を報告した例はなく、独自の結果を獲得できたと考えている。 このデータベースを元に糖尿病マウスの近位尿細管細胞のDNAメチル化との比較はスムーズに進めており、次年度中に複数の遺伝子での異常を明らかにすることができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、平成25年度に得られた正常マウスの近位尿細管細胞DNAメチル化状態を、糖尿病マウスのものと比較して、糖尿病によるDNAメチル化変化を明らかにする。トランスクリプトームの解析を並行してすすめてDNAメチル化により制御される遺伝子変化を明らかにする。経時的な変化および、ヒストン修飾も検討して、エピジェネティック異常の成立過程を解析する。また治療に対する反応や培養細胞を用いた検討も行い、どのようにエピジェネティックスが糖尿病性腎症に関わるか解明を進める。
|