本研究は、ポドサイトに限局して高発現する転写因子Foxc1とFoxc2に着目し、ポドサイト機能維持の機構と糸球体硬化症の発症および進展機序を明らかにしていくことを目的として実施した。昨年度までの検討で①生体でFoxc1とFoxc2を欠失させたマウスにおいても、ポドサイト特異的にこれらの因子を欠失させたマウスにおいても、高度の尿タンパクが出現すること、②ポドサイト傷害の程度がFoxc1/2の濃度に依存すること、③ポドサイトの機能維持にはFoxc2がより重要であること、④Foxc1とFoxc2がPodocinやCxcl12などのポドサイトの機能発現に重要な因子の発現を担っていることが明らかになり、論文化したことを報告した。 本年度は、Foxc1とFoxc2がポドサイトで形成する転写因子ネットワークを解析するために、ChIP-Seq解析による検討に着手した。まず、マグネットビーズを用いてマウス成体腎から単離した糸球体を培養し、初代培養ポドサイトを得た。これを用いて、ポドサイトのクロマチンをChIP-Seqに適した長さにせん断する方法を検討した。再生しないポドサイトのクロマチンは、固くパックされており、条件検討が困難であったが、酵素的切断や超音波破砕機によるせん断などを試し、再現性良くせん断する方法を確立した。次に、ポドサイトに高発現するWT1とMafbの抗体を用いて、ChIPの手法を確立しようとしているが、抗体の選定に苦慮している。一方で、Foxc1とFoxc2の抗体についても検討を重ね、免疫染色で使用可能なFoxc2の抗体を入手した。
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