研究課題/領域番号 |
25461235
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
横尾 隆 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70301538)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腎臓再生 / 尿路形成 |
研究実績の概要 |
過去に我々は、ヒト間葉系幹細胞をラットの腎原器に注入し、発育した腎原器をラットに移植することで、尿産生能をもつヒト幹細胞由来の腎組織を再生することに成功している。しかし、この再生腎臓は、尿排泄路がなく4週間程度で水腎症化することが問題であった。そこで実際に移植可能な臓器再生法をクローンブタを用いて構築することが可能か検討した。 まず、体細胞核移植法を用いてクローンブタを作成し、syngenicなブタ間での新規腎臓を作成した。妊娠30日のブタ胎仔から腎原器を取り出し、大網に移植した。移植した腎臓は、移植後4週間で長径約5cmまで発育し、尿を産生したがその後水腎症化した。水腎症を防ぐために尿排泄路が必要であるが、蠕動運動を用いた持続的な尿のドレナージが必要と考え、尿路作製実験を行った。妊娠15日のLEWISラット胎仔から膀胱付腎原器(以下クロアカ)を摘出し、同種ラットの傍大動脈領域へ移殖した。移植4週間後のクロアカ由来の発育腎臓は、腎原器のみを移植した場合に比べ有意に尿管拡張及び間質の線維化が抑制されていた。次に移植4週間後に新規腎臓の膀胱とレシピエントの尿管吻合術を施行した結果、移植8週間後経過しても新規腎臓が産生した尿がレシピエントの尿管を通して膀胱に排泄されることを確認した。これらの結果を踏まえクローンブタ間で尿排泄実験を行った。妊娠30日のブタ胎仔からクロアカを摘出し大網に移植した結果、移植4週間後に新規腎臓の膀胱内に尿の蓄積を確認でき、レシピエントとの尿管吻合術を施行した。吻合後4週目の発育腎臓は、吻合しない場合に比べて水腎症化が抑制され腎組織の発育が保たれていた。以上よりクローンブタを用いた腎臓再生は、新規腎臓の巨大化及び尿排泄路確保という腎臓再生医療に不可避なステップをクリアすることを示しており、移殖可能な腎臓再生という点において有用なツールとなりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブタを用いているため、胎仔を得るのに時間がかかることがあるが、複数匹母体を維持しており、現在まで大きな遅れなくこなせている。
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今後の研究の推進方策 |
現行のシステムでは、プログラムを用いる異種胎仔の腎臓が混入したヒト間葉系幹細胞由来部分と異種動物のキメラ腎臓となってしまう。我々はこの問題に対し、アポトーシスを薬剤存在下で誘導する遺伝子を搭載したトランスジェニックマウス及びブタを作成したが、アポトーシスにより異種部分を排除するタイミングが非常に難しく、腎機能の獲得に悪影響を及ぼすことが確認されている。そこでヒト臨床に応用するためには純粋ヒト腎臓の作成システムが必要となる。具体的には、腎臓のみが欠損した遺伝子改変動物(マウス、ブタ)の胎仔を作成し、本来腎臓が出来るはずであった部分、つまり大きく開いたdevelopmental nicheに、腎不全患者由来間葉系幹細胞、またはiPS細胞由来腎臓幹細胞を注入し純粋な患者由来腎臓原器を樹立し、これを体網内で成熟系とすることにチャレンジする。すでに、透析患者由来間葉系幹細胞およびiPS細胞の樹立は成功している。またこれまでiPS細胞から腎臓幹細胞への分化誘導法が多く報告されているが、我々の研究室でもその誘導に成功しておりこれを用いてもっとも効率が良い細胞を選出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
種付けに一度失敗してしまったため、ブタが胎仔を得るタイミングが年度をまたいでいるため、26年度の予算で胎仔回収する予算が27年度にずれ込んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度開始早々に、ブタ胎仔を回収し尿排泄腔の移植実験を予定より2ヶ月遅れで行う。別の妊娠ブタも得ており、27年度中に予算は使いきる予定隣っている。
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