研究課題
我々はこれまで自己間葉系幹細胞を発生中の異種胎仔の腎臓発生ニッチに注入することにより腎臓系譜に分化させ尿生成能を獲得した再生腎臓の作成に成功している。しかしこの再生腎臓は尿路がないため尿生成量が多くなるにつれ水腎症に陥り、約4週後から徐々に腎機能が廃絶してしまうことが問題となっていた。そこで今回再生腎臓が生成した尿を効率良く排泄させる経路の開発を行った。発生の過程で既に尿管原基は発生中の後腎からの尿量に応じた蠕動運動を開始し、これによりさらに後腎発生が促される。このため単純に拡張した尿管と自己膀胱を人工尿管で接続するだけでは尿は排泄されないことが確認された。そこでラット尿管原基とともに尿排泄腔ごと後腎組織(クロアカグラフト)を移植し、尿排泄腔に尿の貯留が認められる4週後に自己尿管を接続した。これにより4週後も水腎症が生じることなくに尿排泄が継続し、8週後後には自尿の30%までクレアチニン、BUNを濃縮するまでの機能を獲得することに成功した。このシステム(SWPU:Stepwise peristaltic ureter)はブタのクロアカグラフトを用いても同様に機能することが確認された。本法は再生腎臓の尿排泄系として他のシステムで再生された腎臓にも活用可能であり汎用性が高いと考えられ、腎臓再生医療の臨床応用に向けて一つの課題を克服できたと考えられる。
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Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 112 ページ: 12980-12985
10. 1073
www.jikei-kidneyht.jp