研究課題/領域番号 |
25461241
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀田 晶子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20534895)
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研究分担者 |
関 常司 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30206619)
鈴木 正志 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90595662)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | NO / ET / Na再吸収 / 尿細管 |
研究実績の概要 |
アンジオテンシンII(AngII)は血管収縮作用,強力な腎尿細管Na再吸収亢進作用を有し,高血圧発症,慢性腎臓病進行に深く関与している。最近,AngIIの血圧上昇作用には近位尿細管(PT)でのNa輸送亢進が不可欠であることが示された。一方,一酸化窒素(NO)やエンドテリン(ET)はNa利尿作用を有し,AngIIの尿細管作用と拮抗する。ここで興味深いことに,筆者らはAngIIが単離したヒトPTにおいて他種と違い一相性の濃度依存性刺激作用のみを有することを確認した。この詳細な機序と意義について,主にヒトとマウスPTの反応を比較しつつ解析を行った。 昨年度に引き続き,ヒトとマウスPTの反応性を比較検討した。昨年度の研究で,マウスではNO経路がAngII抑制作用に関与する一方,ヒトではNO経路がAngII刺激作用に関与することが示唆されており,AngII作用の種差の由来を検討した。蛍光色素DAF-FMによりPT細胞内でのAngII反応性NO増加反応を調べたところ,ヒト,マウスともにAngIIは濃度依存性にPT細胞内NOを増加させた。このことから,AngIIのNBCe1に対する作用の種差がNO産生経路には依らないと推察された。 次いでエンドセリン(ET1)のNBCe1に対する作用について検討した。マウスPTに各々10 -12 M,10 -10 M,10 -8 MのET1を添加したところ,以前の報告(JCI 1994 Jun;93(6):2572)と同様にごく僅かに低濃度で刺激,高濃度で抑制の二相性反応が見られた。一方ヒトでは濃度依存的に極めて強くNBCe1活性を増強させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトと他種のPTにおけるAngIIに対する反応性の比較については,NO作用,ET1作用について解析が進んでおり,概ね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
1.AngIIのNBCe1に対する作用における細胞内Caの意義について検討を行う。具体的には,Caキレート剤を添加した状態でAngII作用を検討し,また逆にCa-ionophoreを添加し細胞内Ca濃度を上昇させ同様の検討を行う。 2.ET1に関しては,NBCe1に対してマウスで二相性,ヒトで強力な濃度依存的刺激作用と興味深い結果が得られており,申請者らが開発した単離PT培養系(Kidney Int 2015)を用いてET1作用を媒介する受容体(ETA/ETB)の同定を試みるとともに,同様に申請者らが開発した新規管腔側輸送体解析法を用いて管腔側NHE活性に対する作用を検討する。 3.前年度に引き続き,AngIIに対する近位尿細管反応の種差におけるNOS/NO/sGC/cGMP経路の意義について,単離した尿細管を用いた生理実験やERKリン酸化の解析,各種阻害薬に対する反応などにより検討する。野生型マウスに加えてcGKII欠損マウスも用いて同様の実験を行い、cGMP以下の経路についても検討する。
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