PHAIIの患者コホートでの遺伝子解析によりKelch-like 3(KLHL3)、Cullin3の変異が初めて報告されたが、これまでKLHL3/Cullin3とWNKシグナル経路に関しての病態検討は報告されておらず、この変異KLHL3/Cullin3におけるPHAIIへの病態生理は全く不明であったため本研究の対象となった。PHAII患者で報告のあったKLHL3/Cullin3変異を持つ安定発現細胞株を作製し、蛋白を精製し質量分析にかけ、野生型KLHL3/Cullin3と変異KLHL3/Cullin3での複合体を比較検討した。具体的にはKLHL3がWNK-OSR1/SPAK-NCCシグナルにおいてどのような役割をもつのかを解析するために、まず報告のあった複数の変異KLHL3安定発現細胞株を作製し、蛋白精製し質量分析にてKLHL3複合体を解析した。あるKLHL3の変異体ではKLHL3とユビキチンリガーゼ複合体を構成するCullin3との結合が欠落しており、また他のKLHL3変異体ではWNKキナーゼとの結合が欠落していることも判明した。またCullin3ノックダウンにてWNK1の発現増加が認められた。次にKLHL3-Cullin3蛋白を精製し、WNK1を基質としてユビキチンアッセイを行ったところ、WNK1のユビキチン化が確認されWNK1がKLHL3の基質であることが判明、また変異KLHL3ではこのユビキチン化が阻害されていた。またGordon症候群で報告されているWNK4変異発現細胞ではKLHL3との結合も阻害されていることを確認した。これらの結果からKLHL3はWNK1/4のユビキチン化に直接かかわっており、変異KLHL3ではWNKキナーゼのユビキチン化が障害され、結果WNK蛋白の発現増加が下流のシグナルを亢進し、高血圧を呈することを想定された。
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