研究課題
遺伝性高血圧症であるPHAIIは,塩分感受性高血圧、高カリウム血症、代謝性アシドーシスを呈する遺伝性疾患である。その原因遺伝子として最近WNK4, WNK1以外にKLHL3,Cullin3が同定された。平成26年にはKLHL3がCullin3と複合体を形成しWNKに対するE3リガーゼを形成する事を明らかにし、KLHL3-Cullin3複合体によるWNKキナーゼの分解不全に起因するNaCl共輸送体(NCC)による塩分再吸収の亢進がPHAIIの病態の本質である事を明らかにした。Cullin3に報告されている病原性変異はexon9周囲に位置し,変異を有する患者の白血球ではexon9のskippingが起きている事が確認されている.しかしながらこの変異がPHAIIを引き起こす分子病態は明らかでない。平成27年度では、PHAII起因性であるCullin3のexon9のsplice acceptorの変異G(-1)Aをもつノックインマウスを作製しその解析を行った。その結果、変異ノックインマウスは、ヒトでの白血球での結果と異なり、その変異アレルからexon9のskipping が確認できず、ヘテロ変異マウスでの腎臓Cullin3蛋白発現量は正常の約50%であり、変異アレルからは正常の転写翻訳はおきていない事が推測された。同時にこのヘテロ変異マウスではPHAII様の形質は確認できなかった。すなわち、本マウスモデルではexon9のskippingを再現できなかったが、単なるCullin3のheterozygous deletionではPHAIIが発症しない事が確認され、exon9がskipされた変異Cullin3は単なる非機能蛋白でなく、数あるCullin3ベースのE3リガーゼ中でKLHL3に対して特異的に作用する機能を持っている事が示唆された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件)
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