研究課題
これまで申請者らは腎生検組織を用いた網羅的発現遺伝子解析により、高血圧/糖尿病に特有な発現変動を示す遺伝子としてアンジオテンシンIV受容体(AT4)を抽出、想定される可溶成分(sAT4)に対してポリクローナル抗体による感度0.01nmol/mlレベルの測定系を確立しました。臨床症例652例の血漿濃度の測定では、陽性群で有意にBMIが低値であり、かつ有意にアンジオテンシンIが低値であるとの成績が得られ、生物学的な解釈としても整合性のある成績と考えられました。しかしながら感度については、血漿での陽性率が14.3%と必ずしも高くありません。そこでモノクローナル抗体による高感度測定系を確立することにより臨床上大変有意義なバイオマーカーとなることが強く期待され、これを構築し臨床症例で評価することを目的としました。このため、まず抗原タンパク質(標準物質)としての人工合成遺伝子を作製し、発現細胞により培養調製し、次にマウスを免疫しハイブリドーマを作製、クローニングしモノクローナル抗体を精製、高感度ヒトsAT4 ELISAキットを構築する実験系を計画しました。初年度の平成25年度には、人工合成遺伝子の作製、培養調製まで進め、発現ベクターの構築によるCHO細胞での発現を確認しましたが、収量が不十分であり、リコンビナントタンパクによるモノクローナル抗体作成に切り替えました。平成26年度には、マウスの免疫、脾臓、リンパ節とX63との細胞融合を行い、上清によるスクリーニングを進め、clone:48A3、55A2、57A2、62A2、77A1を選択、サンドイッチELISA法による組み合わせ試験の結果、固相化側に62A2, 77A1を用い、標識側に48A3-Fab’を用いるものが最適と考えられこれを各2キット作成しました。本年度の平成27年度には、まず、固相化側として62A2, 77A1のいずれがより感度が高いかを決定し、キットを一定数量産し臨床検体での各種病態における意義を解析します。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の全体的な過程としては、抗原タンパク質(標準物質)の人工合成遺伝子を作製し、発現細胞により培養調製し、マウスを免疫し抗体価上昇後ハイブリドーマを作製、クローニングしモノクローナル抗体を精製、高感度ヒトsAT4 ELISAキットを構築し、臨床症例で測定・評価するという概要です。初年度である平成25年度は諸方法を試みた上で、人工合成遺伝子によるタンパク質の合成は困難であると判断し、平成26年度はただちにリコンビナントタンパクを入手し、ハイブリドーマ作製の過程に進み、HRP標識したFab’部位の抗体を作製、適正な測定諸条件、再現性などを検討し、高感度と期待されるヒトsAT4 ELISAキットの作成に至りました。以上より達成度として、おおむね順調に進展していると自己評価いたします。
高感度と期待されるヒトsAT4 ELISAキットの作成に至りましたので、これを用い、臨床症例での測定を実施し、まず、私どもが以前の計画で作成しましたポリクローナル式キットと測定結果を比較検討します。そして既知のRA系マーカーやインスリン抵抗性マーカーとの関係を解析し、各種疾患の発症・進展における関係を解析します。これにより、臨床上有用な新規バイオマーカーの確立を目指します。
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