研究課題/領域番号 |
25461250
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
森 克仁 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60382040)
|
研究分担者 |
庄司 哲雄 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40271192)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | インドキシル硫酸 / fetuin-A / 尿毒症 / 透析 / 血管石灰化 |
研究概要 |
本研究の目的は、尿毒症物質の一つであるインドキシル硫酸(IS)が透析患者の心血管疾患発症・全死亡に関与するのか、さらにその過程に、透析患者の予後予知因子であり石灰化抑制作用のあるfetuin-Aが関与しているのか、を検討することである。 まず、透析患者におけるISと心血管疾患発症率・全死亡については、前向き観察コホート(DREAM cohort:5年間のアウトカムの記録あり)の517名の保存血清を用いて、IS濃度を測定した。今後、ベースラインのIS濃度が、透析患者の心血管イベント・生命予後の規定因子であるかについて統計解析をおこなう。 次いで、肝で合成され血中に分泌されるfetuin-AのISによる発現調整の機序について、in vitroで検討を行った。ヒトのhepatoma cell lineであるHepG2細胞にISを添加すると濃度依存的に、また時間依存的にfetuin-Aの発現をmRNA・蛋白レベルで抑制することを確認していたが、この過程で、酸化ストレス、あるいはMAP kinase系が関与しているかについて検討を行った。既報通り、ISはHepG2細胞においても酸化ストレスを誘導した。この酸化ストレスは抗酸化剤投与にてほぼ完全にブロックされたが、fetuin-Aの発現には影響しなかった。またISはMAP kinase系を介して、様々な生物学的作用を発揮することから、ISにより変化するMAP kinase系を検索した。この中でISはp38のリン酸化を刺激したため、ISによるfetuin-A抑制にp38が関与している可能性を考え、p38のノックダウンを施行した。しかしながら、p38のノックダウンはISで低下したfetuin-Aの発現に影響しなかった。以上のことから、ISのfetuin-A発現には酸化ストレスやMAP kinase系は関与していないと判断した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床的検証に関しては、IS濃度の測定が終了している。今後、統計解析に入る段階である。 基礎的研究については、ISによる肝細胞でのfetuin-A発現抑制の細胞内シグナルを検討中である。仮定していた機序については否定的であったが、今後、さらに検証をすすめる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
臨床的研究については、IS濃度を測定した同じ前向きコホートの保存血清を用いて、fetuin-A濃度を測定する。基礎研究で確認されたISによるfetuin-A発現抑制が、臨床的にも認められるのか、すなわち、IS濃度とfetuin-A濃度は逆相関するのか、について検討する。 基礎研究は、ISにより活性化される転写因子であるAryl hydrocarbon receptor(AhR)に着目している。すなわちISによるfetuin-A発現抑制が、AhR阻害剤あるいはAhRノックダウンで回復するか検討予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
基礎研究に関しては、key dataがすでにpreliminary experimntsとして遂行されていたため、予測を下回り次年度使用額となった。また予定していた国際学会への参加が、国内学会でのシンポジウム発表と重なりキャンセルとなった。 今後、基礎研究における細胞内メカニズム解明に諸経費が必要となり、また、本年度は国際学会へも参加予定である。臨床研究に関しても、fetuin-A測定費用が生じる予定である。
|